ディレクターズ・メッセージ

この展覧会の「動き」というテーマの中には、「重力」「慣性」「波長」といった、デジタル社会においてもまだ完全に解明されていない現象への想像力を込めました。情報が溢れている現代だからこそ、自然科学だけではなく文化や経済といった人間の営みまでを「動き」という視点で横断的に捉えなおす機会になればと考えています。

その上でこの展覧会は、未来のデザイナーやアーティストである子どもや学生たちに、まるで先輩たちの作品が置いてある図工室に遊びにきたような感覚で観てもらえればと思って企画しました。ただ作品を鑑賞してもらうだけではなくて、どのようにつくられているのか、どんな仕組みになっているのかという制作の流れもオープンにすることで、「自分にもできそう」とか「自分もやってみよう」という衝動が生まれるように心がけています。

つくることは決してブラックボックスになってはいけません。ものをつくるということは一人の仕事ではなく、いろんな人がチームとして参加することで流れだす、ひとつの大きな「動き」なんだという認識が広まることを願っています。それは、展示を観に来る子どもたちだけではなくどんな仕事に就こうか考えている学生、そして既に社会で活動している大人たちにも伝えたいことです。

今日、インターネットを通じて、すぐに様々な情報や知識が手に入るようになっていますが、大事なのはそれらをどう料理して新しいものをつくるかということです。そのために一番必要となるのは難しい理論や肩書きではなく、何の役に立つかはわからないけど「つくってみたい!」と思える衝動、つまり「心が揺れ動くこと」です。僕自身、コトンコトンと音を立てながら何かが回ってるだけで面白いと感じることはきっと、将来この宇宙の仕組みが解明されそうになったときに抱くであろう感動とつながっている。そう信じています。

「動きのカガク」の作品展示に加えて開催されるワークショップやギャラリーツアーなども通して、アートとデザインの境界線を横断する様々なつくり手たちのダイナミックな「動き」をぜひ感じ取ってください。

プロフィール

菱川勢一 Seiichi Hishikawa

クリエイティブディレクター/映像作家/写真家、DRAWING AND MANUAL ファウンダー、武蔵野美術大学教授
1969年東京生まれ。レコード会社、家電メーカー宣伝部、海外音楽チャンネル番組制作、ハリウッド映画予告編制作など多岐にわたる経験を持ち、TVCMやミュージックビデオの映像監督、企業ブランディングやWebサイトのアートディレクター、ファッションやイベントなどの舞台監督を歴任した。ニューヨークADC賞、ロンドン国際広告賞など国際的な受賞多数。2011年に監督を務めたNTTドコモのCM「森の木琴」がカンヌライオンズにて三冠を受賞した。
http://www.drawingandmanual.jp/


「動きのカガク展」ドキュメント映像/制作:ドローイングアンドマニュアル(DRAWING AND MANUAL)
本展の制作プロセスを追うドキュメント映像。展覧会の進行を映像で見せる。
左:2015年3月5日 パンタグラフアトリエ/右:2015年3月23日 東北工業大学
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