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「写真都市展 −ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち−」

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ウィリアム・クライン

ウィリアム・クライン「Self portrait, Paris 1995 (Painted 1995)」

写真家、画家、映画制作者、そしてグラフィックデザイナーであるウィリアム・クラインは、多くの論争を巻き起こし、大きな影響を残してきたアーティストの一人です。

1928年にニューヨークで生まれた彼は、マンハッタンで育ちました。18歳で大学を終えると、アメリカ軍に入隊。ドイツで6ヶ月間任務に就いた後、仏米の友好プログラムの一環でフランスに渡り、ソルボンヌ大学で1年間学びました。パリで兵役を終えたクラインは、絵画に没頭。短期間、フェルナン・レジェのもとで学んでいたこともあります。その後、ミラノで幾何学的なハードエッジの壁画を制作しました。

1954年ニューヨークへ帰国すると、写真集をつくるという着想を得ました。クラインは故郷に対し、愛憎相半ばする感情を抱いていました。そして彼は、他の芸術の陰に隠れまだ知られていなかった、写真というものが持つ可能性を見いだすのです。正式な写真の教育を受けていなかった彼はタブーを無視した写真を撮りました。その作品には、広角、粗さ、激しいコントラスト、偶然生まれた効果や普通では用いられない特異なフレーミングが使用されています。その結果、彼の最初の写真集『Life Is Good & Good for You in New York: Trance Witness Revels』(邦題『ニューヨーク』)が生まれたのです。それはまさに、ダイナミズムと卓抜した激しさを兼ね備えたものでした。1956年にパリ、ロンドン、ローマで出版されたこの本は、ニューヨークでは出版されませんでした。アメリカではこの作品は、あまりに暴力的で、気分の良いものではないと受け取られたのです。クラインはフランスでナダール賞を受賞しました。この成功に伴い、世界の他の大都市をテーマにした本が出版されました。1956年に撮影した写真が掲載された『ローマ』、1959年から1961年の写真を使用した『モスクワ』、1961年の『東京』。そして、2000年から2002年にかけて撮影された写真を主に使用した『パリ』。これらは写真の世界でベストセラーになりました。

1958年、クラインは初めてのポップ映画「Broadway By Light」(邦題「光のブロードウェイ」)を撮影しました。そして1960年代半ばには、写真撮影をやめて映画に専念するようになり、約20のドキュメンタリー映画、長編映画、フィクション映画の撮影を行いました。代表作に、「Muhammed Ali, The Greatest」(邦題「モハメド・アリ/ザ・グレーテスト」、1964年-1974年)、「The Little Richard Story」(1980年)、「Grands soirs et petits matins」(邦題「革命の夜、いつもの朝」、1968年)、「Qui êtes-vous, Polly Maggoo ?」(邦題「ポリー・マグー お前は誰だ?」、1967年/ジャン・ヴィゴ賞受賞)、「Mr. Freedom」(邦題「ミスター・フリーダム」、1968年)、私たちの時代のイデオロギー神話への痛烈な皮肉を込めた寓話「Le Couple témoin」(邦題「モデルカップル」、1977年)、「The French」(1981年)、「Le Messie」(2000年)があります。

1980年代に入るとクラインは再び写真撮影を始め、世界中で展覧会を行ったり、『Close Up』(1989年)、『Mode In&Out』(1994年)、『ニューヨーク』(1995年)の新版など数多くの本を出版したりしました。『ローマ』の新版、『Rome+Klein』(2009年)も出版されました。2008年には、拡大したコンタクトプリントの上に色を塗るという新しい解釈を加えた写真選集を出版。2012年には、彼の最初の抽象画や絵画作品が収録された『Paintings etc.』、続いて2015年には『Black and Light』が出版されました。

クラインは多くの賞を受賞しました。フランス国内のグランプリを始めとして、芸術と文学におけるレジオンドヌールのコマンドゥールも受賞しています。英国王立写真協会のセンテナリー・メダル、スウェーデンのハッセルブラッド基金国際写真賞受賞。ニューヨークの米国芸術協会および国際写真センターからも、彼の功績全体に対して賞が贈られています。リエージュ大学からは名誉博士号が授与されています。

2005年12月、ポンピドゥー・センターにて彼の作品の大規模な回顧展が開かれ、400ページの本、『Rétrospective』が共同出版されました。2012年にはロンドンのテート・モダンにて「William Klein + Daido Moriyama」展が開催されました。以後、2013年にはアムステルダムのFOAM写真美術館にて、2016年にはルーアンのサントゥアン修道院およびミラノ裁判所にて展覧会が、同じく2016年イエールにて「William Klein + Polly Maggoo」展が、2017年にはC/Oベルリンにて「Films & Photographs」展が開催されました。

ウィリアム・クラインの作品は写真の歴史に足跡を残し、二世代にわたる写真家や映画製作者に影響を与えました。
彼は、ヨーロッパ中そして世界中で展覧会を開催し続けています。