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㊙展企画チームメンバーが考えるこれからのデザイン

企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」は、新型コロナウイルス感染拡大の防止のための臨時休館を経て、2020年6月1日より展示を再開しました。
人々の生活や価値観が変わりつつある今、ものづくりの現場に立つ「つくる人」は、何を感じ、考えているでしょうか。
ここでは、デザインやものづくりの現場で活躍する本展企画チームのメンバーからのメッセージを紹介し、次の世代の「つくる人たち」にとってのインスピレーションの種となることを願います。

田川欣哉(展覧会ディレクター)
刻々と振り子のように振れて変化するニューノーマルの時代、デザイナーにとっても、人工物・システム・都市・移動など人間生活のあり方を根本から見直す機会となっています。長期視点・俯瞰視点に立ちながらも、個々の課題についてはプロトタイピング的に取り組む速いリズムが必要です。だからと言って、クオリティの低いものが許容されるわけでもありません。分野を越えた協業や統合的アプローチも、デザインの果たし得る大きな役割となるでしょう。何も諦めずにやり続けられるか。プロフェッショナルとしての姿勢が問われています。

佐藤 卓(グラフィックデザイン)
語りかけると、AIが何でもしてくれる。自分の行動も価値観も把握されていて、先を読み、前もっていろいろと用意もしてくれる。そうなると視覚によるインターフェイスデザインも最小限になっていく。見える部分より見えない部分のデザインが重要になっていく。見えないものが我々の生活に大きく影響するという意味では、新型コロナウイルスも同じである。見えない恐怖により、今人は、見えているという安心感に一番有り難さを感じていると思うが、それは逆にいえば、今まで視覚による情報に頼り過ぎていたともいえる。人には計り知れない豊かな感覚が宿っていることを、このようなときにこそ再認識して、次のデザインの可能性を探れないだろうかと思っている。

中原崇志(会場構成)
コロナ禍の影響で、私の関係する展覧会やイベントも中止や延期を余儀なくされたものが多く、今でも元通りの状態での開催は難しい状況が続いています。
予想していなかった事が起こり、展覧会やイベント等多くの人が同時に体験するという行為を見直す模索が、進行中のプロジェクトでも進んでいます。そういった中で、自粛中にWEB上のバーチャルな世界での試みが活発になってきました。
これまでリアルな物質的な体験を通して文化を伝えてきましたが、改めてリアルとバーチャルな体験を見直す機会となっている気がします。
社会的に揺れ動いている今だからこそ、リアルな固定された価値とバーチャルな運動性のある価値が連動することで新しいミュージアムの形を生み出せる機会と捉えています。

土田貴宏(テキスト)
オルタナティブな未来を提示して議論や思索を喚起するスペキュラティブデザインという手法がありますが、現在は半年前から見るとオルタナティブな未来そのもので、実際に多様な議論や思索をもたらしています。この状況に逆行したり、ただ適応するより、スペキュラティブデザインの目指すところが「望ましい未来」であるように、思索を糧として前向きな変化を意識したい。個人のライフスタイルも、国や政治のあり方も、そんな時機にあると思います。

DRAWING AND MANUAL 菱川勢一(映像)
ひとまずは未曾有の事態にありながら
お互い元気でいられることを喜ぶ光景が毎日のようにあちこちで見られます。
これは純粋創作の現場においてかつてないほど美しい光景とも言えます。
新しい発見というより、再発見に近い部分で知恵を絞り合う。
わたしが身を置いている映像や教育の分野で「優しくなれる」ことこそが
ものをつくる現場において重要で、ないがしろにしてはいけないことだと感じています。
博愛と互助の気持ちがものづくりの原点になったのだとひしひしと感じている昨今です。
そして近い将来、触れ合うことの喜びを再発見したい。

面出 薫(照明監修)
㊙展では会場の照明デザイン監修を行いました。会場全体は暗くしながら、快適な鑑賞の流れができるように工夫しました。
快適な光にこだわることが大切です。建築空間、屋外環境、都市空間でさえ、いい光に出会うと見違えるほどの品質になるのです。
光にこだわると美男美女が増えます。美味しい食卓に出会えます。薄暮の街が美しくなります。光の足し算掛け算ではなく引き算が必要な時代を迎えています。陰影のデザインの時代を迎えています。