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2025年10月 (3)
ギャラリー3では、2025年10月1日(水)から11月24日(月・祝)まで「TYPE XIII Atelier Oï project by A-POC ABLE ISSEY MIYAKE:一枚の布から生まれる、新しい光のかたち」を開催しています。
建築やプロダクトデザインなど、スイスを拠点に多岐にわたる分野で活躍するデザインスタジオatelier oï(アトリエ・オイ)と、異分野や異業種との協業を通じてこれまでにない服づくりを探求しているA-POC ABLE ISSEY MIYAKE。本展は、デザインに対する思想やアプローチに共鳴した二者が協業して生まれた、「一枚の布」と「一本のワイヤー」を融合させた新たな照明器具シリーズを展示しています。来日したatelier oï共同設立者パトリック・レイモンは、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEを率いるデザイナー宮前義之とそのチームとの協業について「徹底的に素材に向き合うという共通点のもと、『ワン・チーム』として活動してきた」と語りました。
会場は、二者のインタビューと制作風景の映像から始まります。そしてギャラリーでは、二種類の白い照明器具のシリーズが効果的にインスタレーションされています。一つ目、ポータブル型の「O Series」のシェードには、atelier oï が構造設計を手掛けた楕円形のワイヤーフレームと、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEの服づくりに活用されているリサイクルポリエステルをベースにした「Steam Stretch」素材が使われています。Steam Stretchは、一枚の布にデザイン要素をあらかじめ織り込み、熱を加えることで意図した部分の布を収縮させ、繊細で立体的なプリーツ形状のテクスチャーを生み出す独自の技術です。二つ目の「A Series」は、A-POCを象徴する無縫製ニットによる照明シリーズで、ペンダント型照明器具のプロトタイプを展示しています。このシリーズでは、チューブ状のニット生地にあらかじめシェードの形状が編み込まれており、フレームとなるワイヤーを挿入することで、立体的なフォルムに変化します。さらに、連続して編まれたシェードは、カットする位置によって、シングル、ダブル、トリプルなど、空間に合わせてさまざまな形状や大きさに仕上げることができます。A-POCならではの遊び心に溢れたデザインが特徴です。
本展会期中、21_21 NANJA MONJAでは、特別にA-POC ABLE ISSEY MIYAKEのプロダクトを販売しています。ぜひお立ち寄りください。







© ISSEY MIYAKE INC.
2025年3月7日(金)から6月15日(日)まで開催した企画展「ラーメンどんぶり展」の記録映像を21_21 DESIGN SIGHT公式 Vimeoアカウントにて公開しています。
映像:渡辺 俊介
2025年9月13日(土)、企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」に関連して、「『そのとき』を、みんなで考えよう」を開催しました。
本イベントは二部構成で、第一部を「子どものための防災ワークショップ」、第二部を「大人のための防災セッション」と題して開催しました。本展に学術協力として携わる災害社会学の専門家・関谷直也と、企画協力およびテキストを手がけたデザインライター・角尾 舞が、モデレーターとして登壇しました。
第一部の「子どものための防災ワークショップ」では、小学校と中学校に通う参加者がオリジナルのワークシートを使って、本展で提示されている「『安全な場所』って、どこ?」や「十分な備えって、どのくらい?」などの災害や防災に関する問いに向き合いました。考えた内容は順番に発表し、関谷・角尾との対話も重ねることで、防災に関する知識を深めていきます。

「あなたにとって、その後の生活に必要なものはなに?」という問いに関連しては、防災バッグに入れておきたいものをテキストやイラストで自由にまとめました。参加者からは、寝袋・寝巻き・下着・耳栓といった生活に直結するグッズや、iPad・ヘッドフォン・トランプといった娯楽のアイテム、さらには両親の存在など、多種多様な意見が挙がりました。

関谷は、災害時は必ずしも避難所に避難するとは限らず、たとえば自宅が安全であれば在宅避難をするような場合もあると述べました。その場合に備えて、水や食料、トイレなどの「ないと生活できないもの」を、1週間分を目安として自宅に備えておくことが大切だと呼びかけます。
最後に、自身が記入したワークシートを持って記念撮影をして、第一部の「子どものための防災ワークショップ」は幕を下ろしました。
第二部の「大人のための防災セッション」では、関谷の解説を聞きながら、第一部よりも一歩踏み込んだ内容で災害や防災について見つめ直していきます。

関谷によると、私たち人間には心の平穏を保つための機能として「正常性バイアス(正常化の偏見)」というものが備わっていますが、非常時にこの防御作用が働いてしまうと、本来であれば危険な状態と判断すべき事象を「大きな問題ではない」と誤認する危険性があると言います。その対策として、日頃から災害や防災について考えておくことが非常に重要なのです。
都市においては特に地震火災に気をつけるべきで、火災から逃れるために自宅付近の広域避難場所を把握することが大切であること。災害があったときには気象庁が出す一次情報を確認し、それらの情報を理解して迅速な避難(安全確保)を行うこと。このような、改めて認識しておきたい防災に関するさまざまなトピックスを、本展で提示されている10の「問い」をもとに、関谷・角尾の両名と参加者がコミュニケーションを取りながら紐解いていきました。

セッションの終盤、参加者から寄せられた質問に関谷が答える場面では、災害時のトイレ問題についても改めて触れられました。停電、断水、排水管の破裂などが原因でトイレが使えなくなったときに備えて、たとえば携帯トイレを持ち歩いておくことは非常に有効です。
21_21 DESIGN SIGHTの1Fにあるギャラリーショップ「21_21 NANJA MONJA」では、11月3日までの会期中に、本展オリジナルデザインの携帯トイレ「ぽけっトイレ」を販売しています。名刺サイズで嵩張らず、かばんに一つ入れておくだけでも安心です。
災害社会学を専門とする関谷の知見を交えながら、防災について思考を巡らせた第二部「大人のための防災セッション」も、盛況のうちに締めくくりとなりました。

