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2025年7月26日(土)、企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」に関連して、トーク「みんなは、どうする?」を開催しました。
本展でディレクターを務めたWOWから大内裕史、加藤 咲、白石今日美の3名が登壇し、21_21 DESIGN SIGHT館長の佐藤 卓とともに、本展の制作背景、全体の構成や展示作品一点一点の紹介、また各々の防災への考え方やこれからの防災について語り合いました。

本展では、特設サイト「みんなは、どうする?」webにアクセスし、会場内に散りばめられた10の問いに答えていくことで、防災を「自分ごと」として捉えることのできる構成となっています。本トークイベントにおいても、参加者に問いを投げかけるという、本展ならではの仕組みを取り入れました。トークは各問いの順に沿って進行し、展示内容の紹介を中心に展開されましたが、合間で防災に関する4つの質問が参加者に投げかけられます。参加者は本トーク限定のサイトから自身のスマートフォンで回答することができ、回答は、個人が特定されない形でリアルタイムでモニターに投影されます。参加者の考えがその場でビジュアライズされ共有されることで、双方向のコミュニケーションを通じてトークが展開されました。

投げかけられた問いは次の4つです。
・友達と防災の話、したことある?
・どんなときに地震が来たら困る?
・防災アプリ、スマホに入れてる?
・防災バッグ、いつごろ見直した?
2つ目の問いに対して参加者からは、入浴中、旅行中、エレベータの中、地下鉄、美容室、歯医者での治療中、などいろいろな回答が出てきました。人口の多い都市部では、エレベータや地下鉄に閉じ込められ救助されるまで何時間も過ごさなければならないような事態が想像されます。WOWの3名は、本展の準備期間中に各々携帯トイレを購入したと話しました。加藤は、もしもの事態を一回でも想像してみることが心の備えにつながるといい、一度自分自身で考えたという経験をもつことが、大切なのではないかと話しました。

ギャラリー3では、2025年8月9日(土)から28日(木)まで「GOOD PRINTER」を開催しています。
21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3に一歩踏み込むと、内側の床も柱も養生されたような薄いシートに覆われ、まるで工場に迷い込んだような空間が現れます。そしてその中央には、金属の支柱に囲まれた細長い装置が横たわり、ゆっくりと動きながらキャンバス布に様々な模様をプリントしていきます。この「工場」を立ち上げたのは、「いいもの」を探求し、遊び心にあふれた独自の雑貨開発に取り組むブランド、GOOD GOODS ISSEY MIYAKE。プリント装置の開発を手がけたのは、前例のないものづくりに取り組み続ける、エンジニア集団nomenaです。
2018年にスタートしたGOOD GOODS ISSEY MIYAKEは、専門分野が異なるメンバーが集い、ものと使い手の関係性に目を向けたものづくりをする中で、実験的な発想からデザインを行っています。生活や作業場の中にある日常的なものを使って、生地にプリントする実験から始まった本展では、nomenaが開発した独自の技術で生地にプリントを描き続ける装置「GOOD PRINTER」を会場の中央に置き、その稼働中に来場者が少しずつ関わることで、偶然性のある布を作ることにしたのです。
装置は開館日の毎日13:00から17:00の間に稼働し、1〜2日ごとに図柄のついた布ができます。通常の工場とは違い、同じ図柄が再びプリントされることはありません。生地はそのまま会場内で乾かされ、のちにプロダクトに使用される予定です。また本展会期中、21_21 NANJA MONJAでは、特別にGOOD GOODS ISSEY MIYAKEのプロダクトを販売しています。ぜひお立ち寄りください。
プロフィール
nomena
2012年、武井祥平により設立。日々の研究や実験、クリエイターやクライアントとのコラボレーションを通して得られる多領域の知見を動力にして、前例のないものづくりに取り組み続けている。近年では、宇宙航空研究開発機構JAXAなど研究機関との共同研究や、東京2020オリンピックにおける聖火台の機構設計などに参画。主な受賞歴に、2024毎日デザイン賞、第25回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞、21年Penクリエイター・アワード、17年DSA日本空間デザイン賞金賞、日本サインデザイン賞優秀賞、12年MOTブルームバーグ・ヴィリオン・プロジェクト[公募展]メディア・パフォーマンス部門グランプリなど。






© ISSEY MIYAKE INC.
撮影:吉村昌也
ギャラリー3では、2025年7月10日(木)から8月3日(日)まで「FLY WITH IM MEN」を開催しています。
三宅一生の「一枚の布」というフィロソフィーに基づいたものづくりを追求するメンズブランド、IM MEN(アイム メン)による本展は、真っ白な布から始まります。これは、その前に展示された軽やかなコート「FLY」のボタンを外して広げたもの。「耳」と呼ばれる織物の端までそのまま衣服として表現したその造形だけでなく、部分植物由来と中空糸のポリエステル糸を使い、シワになりにくく軽さも追求したテキスタイルの技術も重要なプロセスです。そして続く3つのコート、人工ムートンに箔プリントを施した「METALIC ULTRA BOA」、100%植物由来のポリエステルを基材とした人工皮革スエードによる「HERON」、伝統技法の絣染めを現代的に表現した「KASURI」でも、「FLY」同様に「一枚の布」からの驚くような造形が追求されており、実物とともに映像で見ることができます。
技術とデザイン、クリエイションが一体となったものづくりを目指すIM MENデザインチームによるこれらの衣服は、2025/26年秋冬パリ・ファッション・ウィークで発表され、パリで3日間一般公開されたものの一部です。会期中は、毎週土曜日と日曜日の15時より、デザインチームによるギャラリーツアーが開催されます。ものづくりの可能性に触れ、体感していただけるこの機会に、ぜひお越しください。






© ISSEY MIYAKE INC.
写真:吉村昌也
2025年7月4日、いよいよ企画展「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」が開幕します。
自然災害はいつどこで発生するか、確実にはわかりません。しかし災害から目を背けなければ、今やるべきことや、考えるべきことが見えてくるのではないでしょうか。
本展では、そもそも災害とはなにかという視点から、データビジュアライゼーションをはじめとしたリアルな状況把握や、防災に関するプロダクト、災害をきっかけに生まれたプロジェクトなど、人々が直面してきた自然災害とその周辺を広く見つめ直します。そのうえで、改めて向き合いたい、いくつもの「問い」を会場に散りばめます。あらかじめ想像しておけば、未来は少し変えられるかもしれません。
ここでは会場の様子を写真で紹介します。




柴田大平「防災グラデーション」

siro+石川将也「そのとき、そのとき、」

日本郵便株式会社+寺田倉庫株式会社「防災ゆうストレージ」

バリューブックス「ブックバス」


トラフ建築設計事務所+石巻工房「Maker Made Since 2011.3.11」

WOW「みんなは、どうする?」

WOW「みんなは、どうする?」

佐竹真紀子「Seaside Seeds」「風景のつづき」「おばちゃんコーヒーはじめました」

津村耕佑「FINAL HOME」

中村至男「21_21 DESIGN SIGHTの防災」

veig「蒸庭」
撮影:木奥恵三/Photo: Keizo Kioku
2025年5月23日(金)、ギャラリー3で「TASCHENエグゼクティブ・エディター: Dr.ペトラ・ラマーズ=シュッツェによるトーク『TASCHENの本づくり』」を開催しました。

ドイツのアートブック出版社TASCHEN(タッシェン)で長年編集者をつとめるペトラ・ラマーズ=シュッツェが、日本で初めて行った本トークでは、21_21 DESIGN SIGHTに合わせて、アートブックの愛好家や出版関係者だけでなく、デザインに興味をもつ方を中心に、広く一般に向けて本づくりを語りました。
1980年代にドイツのケルンで小さなコミックショップから始まり、現在は世界に220人のスタッフを持つユニークな存在のアートブック出版社として知られるようになった同社。その歴史と、出版シリーズを紹介した後、本づくりの哲学やシュッツェが現在取り組んでいる新しい書籍について紹介しました。
シュッツェは聴講者の質問にも多く答え、TASCHENの取り組みを通して、アートと本づくりへの情熱とこだわりが、いかに人々の生活を豊かなものにするかを考える貴重な機会となりました。

2024年9月27日(金)から2025年2月16日(日)まで開催した企画展「ゴミうんち展」の記録映像を21_21 DESIGN SIGHT公式 Vimeoアカウントにて公開しています。
映像:渡辺 俊介
* Please scroll down for the English version.
「Bloomberg Connects(ブルームバーグ・コネクツ)」にてデジタルガイドを公開しました。
過去の企画展に関するコンテンツや、建築の見どころやパノラマツアーなどを中心に、21_21 DESIGN SIGHTの情報をいつでもどこでも気軽にご覧いただくことができます。
また、「Bloomberg Connects」は翻訳機能が充実しているため、日本国内のみならず世界中のユーザーにもデジタルガイドをお楽しみいただけます。
本ガイドを利用することで、当館だけでなく世界のアートとカルチャーをより身近に感じることも可能となります。

ご利用は、アプリをダウンロードいただくか、ブラウザ版でもご覧いただけます。
アプリでのご利用
1. 以下のURLをクリック、もしくはApp StoreやGoogle Playで「Bloomberg Connects」と検索。無料でダウンロードいただけます。
・App Store(外部サイト)
https://apps.apple.com/jp/app/bloomberg-connects/id1476456847
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https://play.google.com/store/apps/details?id=org.bloomberg.connects.docent&pcampaignid=web_share
2. アプリを開いて「21_21 DESIGN SIGHT」と検索。言語を選択したら、ガイドを開始して多様なコンテンツをお楽しみください。
ブラウザ版でのご利用
以下のURL(外部サイト)をクリックし、21_21 DESIGN SIGHTのガイドページをご覧ください。
* アプリをダウンロード済みの場合、以下のURLをクリックすると自動でアプリが立ち上がります。
https://guides.bloombergconnects.org/ja-JP/guide/2121-design-sight

Bloomberg Connects(ブルームバーグ・コネクツ)とは
「Bloomberg Connects」は、世界の文化施設を紹介する無料のデジタルガイドです。ユーザーがご自身のモバイル端末から、いつでもどこでも簡単に芸術や文化情報にアクセスすることができます。
本ガイドには、世界有数の博物館、舞台芸術施設、野外彫刻公園や植物園など、数百もの施設が登録されています。それぞれの施設がコンテンツを展開し、開催中の展覧会情報などを発信しています。中には、専門家による解説やハイライト動画、ピンチズーム機能、展覧会マップ表示など、便利な機能が搭載されています。
アプリは、App StoreまたはGoogle Playから無料でダウンロードできます。
https://www.bloombergconnects.org(外部サイト)
A digital guide is now available on "Bloomberg Connects."
You can easily access information about 21_21 DESIGN SIGHT anytime, anywhere, focusing on contents related to past exhibitions, architectural highlights, panoramic tours, and more.
In addition, "Bloomberg Connects" features extensive translation capabilities, making the digital guide accessible to users not only in Japan, but around the world. By using this guide, users can feel more connected not only to the museum, but also to art and culture around the globe.

You can view the guide by downloading the app or using the browser version.
Using the App
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2. Open the app and search for "21_21 DESIGN SIGHT." After selecting your language, start the guide and enjoy the diverse contents.
Using the browser version
Click the link (external website) below to access the 21_21 DESIGN SIGHT guide page.
* If you already have the app installed, it will automatically open when you click the link.
https://guides.bloombergconnects.org/en-US/guide/2121-design-sight

About Bloomberg Connects
Bloomberg Connects is a free digital guide to cultural organisations around the world. It makes it easy to access and engage with arts and culture from mobile devices, anytime, anywhere.
The guide offers information about current exhibitions at a portfolio of hundreds of participating cultural partners through dynamic contents tailored to each organisation. Participating collections currently include world-class museums, performance venues, outdoor sculpture parks, and botanical gardens. Features include expert commentary, video highlights, pinch-and-zoom capability and exhibition maps.
The app can be downloaded for free via App Store or Google Play.
https://www.bloombergconnects.org (external website)
2025年5月10日(土)、企画展「ラーメンどんぶり展」に関連して、トーク「漏庭からどん景へ」を開催しました。本展の参加作家としてサンクンコートに庭を制作したveigの西尾と、2月に終了した企画展「ゴミうんち展」で展覧会ディレクターを務めた文化人類学者の竹村眞一が登壇しました。(veigの片野は都合により欠席となりました。)
造園ユニットveigは企画展「ゴミうんち展」において、サンクンコートに「漏庭(ろうてい)」という庭を制作しました。続く企画展「ラーメンどんぶり展」では主要な樹木を入れ替え、「どん景」と名付けた新たな庭を展示しています。もともと何もない鉄板敷きのコンクリートの空間に突如現れたこの景色は、秋に植えられ、落ち葉が積もり、冬を越して春を迎えた後も、展覧会や季節を超えて変化を続けています。
それぞれの庭に込めた想いや制作の意図について、過去のveigの仕事の事例も交えながら、その庭づくりの背景を説明しました。

竹村は、都市空間に生態系を築くveigのような活動が、自然環境と人間とのポジティブな関係を築く観点から、非常に意義深い仕事だと強調しました。
竹村が驚いたのは、企画展「ゴミうんち展」の4ヶ月間の会期中に、サンクンコートに設置された「漏庭」で、部分的に約5センチも土が増えていたという事実です。もともと土のなかった地球に、さまざまな生物が何億年もの長い年月をかけて土をつくり上げてきたことを考えると、これは驚くべき現象だと語りました。西尾によれば、サンクンコートには風が吹かず、土の流出が少ないことがその要因と考えられるといいます。

撮影:木奥恵三
続く企画展「ラーメンどんぶり展」における「どん景」では、アオダモや紅葉を赤松に変えるなど、優先樹種を変えることで新しい景色を生み出しています。赤松は「先駆ツリー(パイオニアツリー)」ともいわれ、寿命が短く、裸地にいち早く根を張り、早く倒木して土に還ることで、次世代の植物が育つ土壌を形成します。赤松は燃料革命以前に焼きものの焼成の燃料としてつかわれ、美濃焼の産地の発展にも重要な役割を果たしてきました。
veigが手がける庭は、自然のある一場面を参照しています。その庭が私たちにどんな問いを投げかけているのか、そんなことを考えながら見てほしいとトークを締めくくりました。

撮影:木奥恵三
企画展「ラーメンどんぶり展」では、現代のラーメン屋台のかたちを3組の建築家・デザイナーが提案しています。本展の関連プログラム「ラーメン屋台 in the Garden」として、竹中工務店による「Nomad Roof」と、TONERICO:INC.による「おかもち屋台」が2025年4月26日から5月6日までの間、期間限定で屋外に登場しました。ラーメンを食べることはできませんが、現代ではほとんど見かけなくなったラーメン屋台の雰囲気を、ミッドタウン・ガーデンで味わうことのできる機会となりました。

撮影:竹中工務店(正田智樹)

2025年3月22日(土)、企画展「ラーメンどんぶり展」に関連して、トーク「『器』からはじめるラーメン×デザイン考」を開催しました。本展のディレクターを務める、グラフィックデザイナーの佐藤 卓(21_21 DESIGN SIGHT館長)と学芸プロデューサーの橋本麻里が、対談形式で、本展開催に至るまでの経緯や展覧会の構成について語りました。

本展のきっかけは、今から13年前の2012年に遡ると佐藤は振り返ります。美濃焼の産地である岐阜県東濃地方の人々が、美濃焼の魅力をどのように世の中に伝えたらよいか、佐藤のもとに相談にやってきたのです。
美濃焼は、織部や志野、瀬戸黒といった桃山時代から続く伝統的な技法を有し、工芸から、マスプロダクト、タイル、工業用ニューセラミックスの分野など、ありとあらゆるものに展開しています。その広がりがあまりにも多様であるため、特徴や魅力をうまく発信できないことに地元の人々は頭を悩ませていました。
佐藤はこの話を受け、それまで専門的に学ぶ機会のなかった「やきもの」の世界を勉強できるよいきっかけになると考え、引き受けることを決めました。
美濃焼の産地に実際に足を運ぶと、歴史的背景もあり分業化されている現場の様子を目の当たりにし、その壮大さに圧倒されたといいます。このプロジェクトを進めるためには中心となる人物が他に必要だと考え、日本美術に造詣の深い橋本に声をかけたことで、両名のタッグが組まれることとなったのです。
現地に何度も通う中で、ある日佐藤は美濃焼の魅力を伝えるものとして「本」をつくることを思いつきます。その本の導入を何にするか議論していたときに、日本のラーメン丼の約9割が美濃焼であることを知り、「ラーメン」を切り口に本を編集するアイデアが生まれました。誰もが食べたことがあるであろう身近な存在、「ラーメン」を入り口とすることで、やきものに特別興味のない人にも美濃焼の魅力を伝えることができると考えました。
残念ながら、本の制作はその後しばらく眠ることとなりますが、美濃焼に関するプロジェクトは「ラーメン」という新たなキーワードを得て続いていきます。
2014年、佐藤もメンバーとして所属する日本デザインコミッティーが運営する、松屋銀座7階・デザインギャラリー1953にて、「美濃のラーメンどんぶり展」を開催する運びとなります。この展覧会は、さまざまなクリエイターらによるオリジナルのラーメン丼とレンゲ25組を並べて展示するという企画で、小規模ながらも開催され、大きな話題を呼びました。
その後、橋本の繋がりで2022年、外務省が世界3都市(サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドン)に設置した対外発信拠点の内、JAPAN HOUSE LOS ANGELESとJAPAN HOUSE SÃO PAULOの二箇所にて「The Art of the Ramen Bowl」と題した展覧会を開催。2014年の展示よりはるかに広いスペースでの開催につき、内容も拡充しました。ラーメン文化を紹介するパートや、ラーメンと丼を要素に解剖するパート、美濃焼の伝統的な技法や多様なデザインを紹介するパートなどを追加し、「ラーメン」を入り口に美濃焼の文化を広く発信しました。
2024年には、「国際陶磁器フェスティバル美濃」に関連して、多治見市に所在する岐阜県現代陶芸美術館にて「美濃のラーメンどんぶり展 The Art of RAMEN Bowl」を開催。そして今年、21_21 DESIGN SIGHTにて「ラーメンどんぶり展」が始まり、2012年以来の東京凱旋を果たしました。

話題は、本展の展示内容の解説に移ります。
展覧会の導入部分である地下ロビーでは、年表やグラフといったデータ、あるいはポップカルチャーと呼ばれる漫画の中でラーメンがどのように描かれてきたかを読み解きながら、ラーメンの歴史と現在について考えていきます。ラーメン店の環境を「音」で感じるインスタレーション作品も体験することで、鑑賞者は「ラーメン」の解像度を上げてからその先の展示へと進みます。
ギャラリー1からギャラリー2にかけては、佐藤による、「デザインの解剖」の手法で迫る「ラーメンと丼の解剖」のパートや、ラーメン丼コレクター加賀保行による約250点の「ラーメンどんぶりコレクション」、2014年から続くアーティストらがラーメン丼をデザインする「アーティストラーメンどんぶり」に新作10組を加えた全40組が展示されています。また建築家・デザイナー3組の設計による新しいラーメン屋台も大きな見どころとなっており、佐藤・橋本の両名もこの「屋台」という存在について、畳んで移動ができるという側面が考えてみるとかなり近未来的であることや、仮設の建築物として、屋台には幾重にも可能性や面白さがあることを熱心に語りました。
そしてギャラリー2の奥のパートでは、やきもののものづくりの根源である「土」に着目した展示空間が広がります。「土をデザインする」技術によって生まれた幅広い製品の数々を一望できるようにしたことで、本展の着地点として、美濃焼の多様さを鑑賞者に示しています。
また、縄文土器が今でも遺跡からそのままの形で発掘されるように、一度高温で焼いたものは再び土には戻らないという事実から、人工物に対する責任、やきものの未来を考えるコーナーも展示。やきものを物理的に砂のレベルにまで細かく砕いた「セルベン」と呼ばれるものを粘土に混ぜ込むことで、またやきものづくりの輪の中に戻す仕組みを紹介しています。

トークの聴講者から、伝統工芸品の存続に関する話題や、佐藤が携わったラーメン店「銀座八五」に関する質問を投げかけられ、対話を楽しんだ両名。最後に、本展に展示されている中から「買うならこれだ」というラーメン丼はあるかと問われます。
橋本は、一つ選ぶのはなかなか難しいと伝えながらも、佐藤の名前を挙げました。佐藤は、自身のラーメン丼をデザインするにあたって考えたこととして、参加するさまざまなクリエイターらはきっと思いもよらないデザインのラーメン丼をつくりあげるだろうと想像したため、自分はいかにもラーメン丼らしいものをつくろうと考えたということ。少しアレンジは入れながらも、意識的に保守的なデザインにしたことなどを説明します。
また佐藤のお気に入りは、竹中直人のラーメン丼。本展のための新作の一つですが、「いい意味で破茶滅茶なデザインで、見た時に仰天した」と感想を述べました。
トークの締めくくりとして佐藤は、冒頭で話題に挙がった「本」が実は10年越しに絶賛制作中であることも紹介しました。
本展に至るまでの道のりや、展示内容、見どころについて、10年以上美濃焼に関するプロジェクトに携わってきた展覧会ディレクターの両名の口から直接語られる貴重な機会となりました。