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2019年7月19日より開催となる企画展「虫展 −デザインのお手本−」。その準備段階では、展覧会ディレクターの佐藤 卓、企画監修の養老孟司のもと、これまでなかなか出会う機会のなかった虫のスペシャリストを訪ね、虫への理解を深めてきました。ここでは、本展テキストを担当する角尾 舞が、その一部をレポートします。

さて、ラオス

大型連休のさなかに元号が変わり、どこか新年のようなムードの5月3日の朝、3人で成田空港に集まった。7月19日から21_21 DESIGN SIGHTではじまる「虫展 −デザインのお手本−」の出展作品の一つ、ラオスの山奥で蛾と共に暮らす青年の、ドキュメンタリー映像を撮影にいく旅がはじまる。厳密には出張だけれど、今回はどこか、旅といってもよい風情がある気がしている。

朝8時45分、23番搭乗口。佐藤 卓さんは、いつもと変わらない飄々とした笑顔で現れた。
「人生でこんな機会ないじゃない。絶対に行きたいと思っちゃったんだよね。展覧会の準備をしていると、なかなか会うことがない人に会えるのが、ほんとに楽しいんだよね」。

卓さんが養老孟司さんから紹介された、ラオスに暮らす青年、小林真大(まお)さん。彼を訪れる計画は、卓さんの一声で始まった。映像作家の岡 篤郎さんと、本展でテキストを担当するわたしが、今回の旅の同行者。会場テキストと直接は関係ないものの、今回の旅の記録をつけてみることにする。

トランジット先のホーチミン空港に着いたのは、現地時間の14時。5時間半ほど機内にいた。外は36度だという。トランジットまでの約一時間、小腹を満たそうと、3人でフォーを食べることにした。岡さんが、機材としてドローンを持ってきた話を聞く。卓さんのご親戚はラジコンのエンジンをつくっていたらしく、昔はずいぶんラジコンの飛行機を飛ばしていたそう。

20分遅れで、ラオス・ヴィエンチャン行きの飛行機は離陸した。カンボジアを経由して、ヴィエンチャンへ。ヴィエンチャンの空港で合流した卓さんは「そんな遠くもないのに、こんなに時間がかかるなんて」と話していた。

イミグレーションの人から「どこに滞在するのか?」と聞かれた。「ヴィエンチャンに一泊したら、プークンにいく」と答えたら「山...?」と言われた。そっか、山なんだ。空港を出ると、小林さんが、ラオスに長く住む若原弘之さんと、小林さんと同じくブレイクダンスを踊る太田行耶さん(通称ひげさん)と一緒に待っていてくれた。ロケバスのような大きなバンが迎えにきてくれて、荷物を詰め込み、ホテルに向かった。

「東京という虫を排除している街で、自然を感じてもらいたい」と卓さんが話すと、それに応えるように、若原さんの話がノンストップで始まった。

ホテルには10分ほどで着いたけれど、ロビーで2時間以上、若原さんの話を聞いた。若原さんについては、「考える人」(新潮社)の養老さんによる記事を事前に読ませていただいていたけれど、たしかに日本人には見えない。ラオスという国にあまりに馴染んでいる。そして、ウソかホントかなんてどうでもよくなるような、人生を10回やってもたどり着けない境地の話が次々と飛び出てくる。

若原さんは、早口だ。お話が止まらない。バンの中でも、ホテルのロビーでも、ずっとお話ししている。そして、内容のスケールが違いすぎて、頭が追いつかない。卓さんもずっと「えー!」とか「おー!」とかと叫んでいる。そう叫ぶほかない。

聞いた話を全部書くと、あっという間に数万文字になってしまうから、大幅に割愛するけれど、若原さんは、高校を出るか出ないかで海外に出た。日本にいる期間は全部合わせても20年に満たないという。ずっと蝶を採るのに熱心で、それは今も昔も変わらない。虫を採ることに人生をかけてきた。聞いている限り、あまりにかけすぎてきた。
最初に住んだのはインドネシアだった。人を雇って昆虫を採り、標本にして売る仕事を始めたが、諸外国からペットショップなどがやってきたため撤退したそうだ。

次に行ったのは、中国。ある研究所に就いて、研究方法を教える名目で約1,200人の研究員と蝶を採っていたという。5年ほどたったある日、突然解雇を言い渡される。それだけでなく、いきなり逮捕。3日後に言い渡されたのは、なんと死刑だったそう。カゴに入れられて街内を引きずり回され、石を投げられ、死を覚悟したとき、香港へ追放へとなった。「僕の犯罪は一人も被害者がいない。だって蝶を採ってただけだもん」。

受け入れられた香港で「次にどこに行きたい?」と聞かれたので、ラオスと答え、無事にラオスへ。そして今にいたる......という。そのままハリウッド映画になりそうなストーリーが繰り広げられ、我々の頭は混乱しっぱなし。しかしどこまでいっても、若原さんの話の中心は、虫だった。

続く

文・写真 角尾 舞

21_21 DESIGN SIGHTは、2019年3月30日と31日の2日間にわたり「TOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Edition」にブース出展しました。

アート出版に特化したブックフェア「TOKYO ART BOOK FAIR(TABF)」。「TOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Edition」は、2019年3月8日 - 4月14日、Ginza Sony Parkにて開催されました。21_21 DESIGN SIGHTは、TABFとの連動企画第1弾として、150組余りの出版社、ギャラリー、アーティストらが毎週末入れ替わる「Exhibitor Booth」に出展しました。

ブースでは、開催中の21_21 DESIGN SIGHT企画展「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」にちなんだ書籍をはじめ、過去の企画展関連書籍や21_21 DESIGN SIGHTオリジナルグッズを展開しました。それらを通して、多くの方が企画展や施設に興味、関心を寄せていました。

なお、TABFとの連動企画第2弾として、同会場でも設置されていたアートブックの販売機「Art Book Vending Machineを4月17日より21_21 DESIGN SIGHT SHOPでも展開しています。キーワードを選ぶと、それに紐づく一冊が"販売機"から出てくる仕組みです(参加料:500円/在庫がなくなり次第終了)。21_21 DESIGN SIGHT SHOPでも、アートブックとの出会いを楽しんでください。
*終了しました

2019年3月10日、「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」の開催に先駆けて、参加作家 ダミアン・プーランによる子ども向けワークショップが、アンスティチュ・フランセ東京にて行われました。

フランス人アーティスト ダミアン・プーランは、デザインと建築の間を手探りし、神道、部族や紋章の記号に影響を受けながら、領域を超えた創作を行っています。「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」で展示している「People Power」は、様々なプロテストソングのタイトルを、グラフィカルな旗に転換させた作品です。
このワークショップでは「私の音楽を見て、私たちの話を聞いて」と題し、子どもたちが自ら好きな曲を選び、その曲にまつわるものや聴いたときの気持ちをあらわす旗をつくりました。

ダミアン・プーラン「People Power」2018年

ワークショップは曲選びから始まりました。子どもたちは、選んだ曲に込められたメッセージや、曲を聴いたときの気持ちを保護者と話し合い、旗のイメージを思い描きます。

旗のイメージが掴めたら、曲名や歌詞、音色などに基づいて色画用紙を切り取り、台紙に貼っていきます。旗を通してどのような想いを伝えたいかプーランとも話しながら、子どもたちは制作を進めました。

それぞれ出来上がった旗を手に、プーランに曲名と旗の特徴を伝えます。最後には記念撮影も行いました。
ワークショップを通して、プーランと日本で暮らす子どもたちとの間に、豊かな交流が生まれました。

ダミアン・プーランは、「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」にて「People Power」の他にも作品を展示しています。プーランが卓球台に、錯視を誘発するようなグラフィックを施した新作「Disruptive Thought」では、実際に卓球を楽しむことができます。ぜひお楽しみください。

2019年3月15日、浅葉克己ディレクション 企画展「ユーモアてん。/SENSE OF HUMOR」が開幕します。

時代を牽引し続けるアートディレクター 浅葉克己にとって、コミュニケーションにおける最も大切な感性のひとつが「ユーモア」です。 本展では、浅葉が国内外から集め、インスピレーションを得てきた資料やファウンド・オブジェとともに、ユーモアのシンパシーを感じているデザイナーやアーティストの作品を一堂に集めます。

時代や国を超えたユーモアのかたちと表現を一望することで、私たちは日々のお営みのなかにある身近なユーモアを見つめ直すことになるでしょう。そして、そこにあるユーモアの感性こそが、デザインやものづくりにおいて重要な、コミュニケーションの本質のひとつと言えるのかもしれません。

撮影:鈴木 薫

開催中の企画展「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」で、テキスト執筆を担当した猪飼尚司が、本展の企画に深く携わり感じたこと、考えたことを全2回でお伝えします。
第2回は、人々が民藝に向ける視線を、本展リサーチ中の自身の体験を交えて語ります。

撮影:吉村昌也

「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」の会場にいて、先日ふと気になったことがありました。それは来場していただいた方々が、口々に「これうちにほしいな」と話している点です。

美術展を鑑賞しているときに、美しいとか、素敵だというコメントを発することはあると思うのですが、「ほしい」という所有欲をくすぐるものって珍しくないですか?

でも、これはみなさんに限ったことではありません。
私自身も同じことを何度となくしているのです。

昨年の夏、本展の企画メンバーで栃木県益子町にある濱田庄司記念益子参考館に伺ったときのことでした。我々は、展示にお貸し出しいただくための作品を確認するためにお邪魔していたのですが、いつのまにか取り憑かれるように自分のお気に入りを語りはじめ、仕舞いにはこの作品ならうちのここに置きたいとか、ほかのメンバーが選んだものを、ずるいなどと言って横取りするという妄想ゲームをはじめていたのです。

同様に日本民藝館の館長室で、本展に展示する作品群を選出していたときにも、もののディテールを見る以上に、直感的にお気に入りのものを決めては、自分の頭のなかに並べていました。

撮影:吉村昌也

一般の美術展ではどうでしょう。いくら大きくニュースで取り上げられ、世間で評判になった作品を鑑賞しても、アートコレクターやディーラーでない限り、ほしいと感じる機会は少ないのではないでしょうか?

同じほしいと思う気持ちでも、ブランドものに代表されるような、貴重で高価であることや知名度のあるものを求める気持ちとは異なります。ブランドの多くは、価値判断を第三者に委ねており、自分だけの基準で物事を見極めていることが少ないと思います。

撮影:吉村昌也

目の前のものを無性にほしいと思う。これはものを愛でる、とても自然な感覚だと思うのです。参考館で見た濱田庄司さんのコレクションも、そして日本民藝館が所蔵する柳 宗悦さんのコレクションも、そして本展で確認できる深澤直人さんのコレクションも、みな私たちが会場で「ほしい!」と思った感覚とまったく同じ気持ちにあるのではないでしょうか。

このほしいという気持ちは、自分の意識、感性の表れであり、とても心地よい感覚です。本展でじっくりと作品群と対面しながら、存分に「これほしい!」と実感していただきたいと思います。

撮影:吉村昌也

猪飼尚司


©永禮賢

いかい・ひさし:
大学でジャーナリズムを専攻後、渡仏。1996年帰国し、フリーランスとして活動を開始。現在は、デザイン分野を中心に、国内外で取材を行う。雑誌『Casa Brutus』『Pen』『MILK JAPON』のほか、企業のブランドブックや展覧会テキスト、地場産業プロジェクトのサポートなどを手がける。

毎年2月、スウェーデンではストックホルム・デザインウィークが開催されます。日本とスウェーデンが外交開始150周年を迎えた2018年、21_21 DESIGN SIGHTスタッフが、そのデザインウィークを訪れました。ここでは、その様子をお伝えします。

Stockholm Design Week takes place every year in February. In 2018, the 150th anniversary of establishment of diplomatic relations between Japan and Sweden, 21_21 DESIGN SIGHT staff visited Design Week. Here is a report on my visit.

スウェーデンの首都ストックホルムには、その200平方キロメートルあまりの土地に数々の美術館や劇場、アトリエが集まっています。デザインウィークの時期にはそのあちこちで催しが開かれます。
初日に訪れたのは、The Royal Academy of Fine Artsの異なる世代の3人のメンバーが、それぞれの仕事を紹介する展覧会『INSIDE architecture』です。例えば公共空間で実際に使われている家具など、これから巡るストックホルムの街を彩るデザインに出会うことができました。

Stockholm, the capital of Sweden, covering an area of 200 square kilometers, is home to dozens of museums, theaters and workshops. Design Week events take place at various venues throughout the city. The first day, I visited the Royal Academy of Fine Arts' "INSIDE architecture" exhibit, which showcased the work of three of its members belonging to different generations. There I viewed designs such as furniture actually used in public spaces, and other works gracing the Stockholm cityscape through which I would soon be walking.

2日目は、大規模な家具の展示会、Stockholm Furniture & Light Fairを見学しました。北欧を代表するインテリアブランドの展示の中には、日本のクリエイターによる作品もいくつか見られるものの、日本からの参加は、出展も来場もまだとても少ないといいます。

On the second day, I visited the Stockholm Furniture & Light Fair, a major furniture show. Well known Scandinavian decorator brands were on display and I also spotted a number of works by Japanese creators. However, Japanese participants and exhibitors in the show are still very few.

その夜には、オープンを翌日に控えたMuseum of Furniture Studiesを一足先に見学しました。所狭しと並ぶ名だたるデザイナーの作品はどれも、Kersti SandinとLars Bülowの個人蔵のものだそうです。

In the evening, I went to the Museum of Furniture Studies, which would be opening the following day. The space was crammed with works by famous designers, all of which are from the personal collections of Kersti Sandin and Lars Bülow.

3日目には、ArkDesのYoung Swedish Design 2018を訪れました。アート、デザイン、建築、インテリア、衣服など様々な分野のこれからを担う若いクリエイターの作品が集まります。このArkDesは、ストックホルム近代美術館に併設されています。館内には、展示室のほかに読書やワークショップのためのスペースもあり、外は吹雪にもかかわらず館内は賑わっていました。

On the third day, we visited ArkDes' Young Swedish Design 2018. This show featured the works of young creators in several fields, including art, design, architecture, decorating and clothing. ArkDes is housed in Stockholm's Museum of Modern Art. In addition to exhibition spaces, the museum offers areas for reading or for workshops, and although a snowstorm was raging outside, the museum was full of visitors.

最終日に訪れたのは、ストックホルム郊外にあるDesign Lab Sです。ここは、8歳から15歳までと、80歳以上の人なら誰でも参加できるデザインラボです。子どもたちが編集者になって特集を考える、掲載する商品や写真を選び、プロのライターやカメラマンとともに本をつくった大プロジェクトを紹介してくれました。

On the last day of our visit, I went to Design Lab S, located on the outskirts of Stockholm. This is a design lab for youngsters aged 8 to 15 and seniors 80 and over that's open to anyone in those age groups. I was introduced to a major magazine production project, where the children acted as editors deciding on products to be highlighted in a special feature, choosing photos, and working with professional writers and photographers to produce the magazine.

他にも、デザイナーやアーティストのアトリエを見学したり、テキスタイルショップで行われる展示を見たり、美術館を巡ったりと、盛りだくさんの数日間でした。
小さな都市にスウェーデンの最新のデザインシーンが凝縮され、短い期間で数々の体験ができるストックホルム・デザインウィーク。北欧へお出かけの際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

During my trip I also went to designers' and artists' workshops, viewed an exhibit at a textile shop, and visited several museums. All in all, I was able to have a multitude of interesting experiences.
Stockholm Design Week was a wonderful experience, where I could encounter the most cutting-edge design movements concentrated in a small city. I heartily recommend that you visit when you travel to Scandinavia.

21_21 DESIGN SIGHT 田代未来子
Written by Mikiko Tashiro, 21_21 DESIGN SIGHT

開催中の企画展「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」で、テキスト執筆を担当した猪飼尚司が、本展の企画に深く携わり感じたこと、考えたことを全2回でお伝えします。
第1回は、猪飼がどのように民藝に向き合い、したためたのか、その姿勢を語ります。

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」は、すでにご覧いただけましたでしょうか?

現代のデザインやものづくりを中心に執筆活動を行ってきた私にとって、本展への参加はひとつのチャレンジでもありました。

以前から交流のあったディレクターの深澤直人さんと日本民藝館学芸員の古屋真弓さんからお声がけいただいたことはとても嬉しかったのですが、正直に言うと、どのように頭を動かし、文章にまとめればよいのかすぐに想像することができず、躊躇したところがありました。

撮影:吉村昌也

一般的に「展覧会テキスト」と言えば、作品の読み解き方を記しているもの。通常ならば、作品が生まれた時代の社会情勢などに照らし合わせながら順序立て、作家がどのようにコンセンプトのもとに技法を編み出し、どのようなプロセスを経て製作に至ったのかなど、作品や作家の背景が明確に理解するためのヒントがそこには隠されています。

しかしながら、民藝には解説の指針となる具体的な資料が存在しません。全国の民藝関連の施設に収蔵されている作品も見ても、箱書きもなく、作者不詳のものが多くあります。同時にそれらがいったいどのような関連性を持っているかを判断するのも困難です。

私も過去に何度となく民藝について執筆する機会はあったものの、それは誰かしらの取材をベースにしたものであり、実際に自分が正面をきって民藝というものと対峙したことはありませんでした。もちろん本展は深澤直人というディレクターの思考をベースに考えられたものであり、すべてを私だけの力で一から執筆する必要はありませんでしたが、一つ一つのセクションを体系化し、文章としてどのように表せば良いのかと思考を巡らせる必要があったのです。

しかし、実際にプロジェクトを進めていく段階で、深澤さんや古屋さんをはじめとした関わるスタッフの方々が、とても素直な感覚で作品と向き合っていることに気づいたとき、自分のなかにも民藝に対する明確な態度が生まれてきました。

結果として私は解説をするのではなく、来場者と同じ感覚で作品を鑑賞する、もしくは状況を傍観しているような感覚で、文章を仕上げていくことに決めました。

実際に会場内に掲げられているパネルに目を通していただけば分かると思いますが、その内容は展示の風景をありのままに捉えたものであり、ときに来館者に問いかけるような文体になっています。

展覧会における文章としては、みなさんにとって少し物足りないものに感じるかもしれません。しかしながら、私にとってこれも民藝、ひいてはものづくりや暮らしと正直に向き合うための一つの方法論だと考えています。

撮影:吉村昌也

猪飼尚司


©永禮賢

いかい・ひさし:
大学でジャーナリズムを専攻後、渡仏。1996年帰国し、フリーランスとして活動を開始。現在は、デザイン分野を中心に、国内外で取材を行う。雑誌『Casa Brutus』『Pen』『MILK JAPON』のほか、企業のブランドブックや展覧会テキスト、地場産業プロジェクトのサポートなどを手がける。

2019年1月19日、ギャラリー3にて「OBI KONBU」展が始まりました。

会場に入ると、鮮やかな21色のトートバッグが目に入ります。その質感からKONBUと呼ばれるこのバッグは、特殊な複数の細い糸で編み上げた大きなバッグを、1/4に縮ませた後に染色するという、独自の製法により生み出されたものです。
編立から整形に至る製造工程を短い映像で観ることができるほか、各プロセスのサンプルを実際に手に取って、その独特の手触りを感じることができます。

奥のコーナーには、平面にたたまれた時の形状からOBIと名付けられたリュックとトートバックが展示されています。これは、熱を加えることで硬化する特殊な糸を用いたジャージ素材をバッグの形に裁断縫製し、折りたたんで熱プレスをかけたものです。
バッグを構成するすべてのパーツを解体したパネルとリズミカルな映像で、構造の新しさとユニークさを観ることができます。

常にリサーチと研究開発を重ね、素材からものづくりを始める三宅デザイン事務所(MIYAKE DESIGN STUDIO)の最新作を、ぜひ会場でご覧ください。

2019年1月17日、日本民藝館 学芸部長の杉山享司の案内により、「日本民藝館と楽しむAnother Kind of Artギャラリーツアー」を開催しました。

「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」は、プロダクトデザイナー 深澤直人のディレクションによる展覧会です。ツアー冒頭で杉山は、「デザイナーとしての深澤氏が、どのように民藝を見ているのか追体験できる展覧会。彼が展示作品の魅力を素直に語るコメントとともに鑑賞して欲しい」と、杉山と話しました。

40年以上にわたり日本民藝館で美の裏方を務める杉山。まずは個々人が先入観なく、ものに感動するところから民藝に触れて欲しいと、想いを伝えます。さらにツアーでは、深澤のコメントを手がかりに展示作品のかたちや素材の面白さに着目。その後にそれぞれの用途やつくり手の背景などを解説しました。
また杉山は展示を考えるとき、色々な並べ方を検証し、もの同士が調和するようにしているとも言います。もの同士が会話をするような空間をつくる喜びについて、「食卓のテーブル構成を考えるように、取り合わせのバリエーションを楽しんで欲しい」と語りました。

終わりに、杉山は「誠実、健康、自然、自由」という民藝の4つのキーワードをあげました。人々の営みから生まれた、控えめだが存在感に溢れた民藝。人の気配があるからこそ、親近感がわくのではないかと、杉山は語ります。私たちの暮らしと民藝との関わりについて、深く知り、考えることができるツアーとなりました。

21_21 DESIGN SIGHT企画展「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」では、1925年、柳 宗悦によって名づけられた、無名の職人たちによる民衆的工芸、「民藝」を、これからのデザインのインスピレーションとなる「Another Kind of Art」と捉え、紐解いています。

ここでは、柳 宗悦らが創立した日本民藝館で開催される展覧会をご紹介します。

日本民藝館「柳宗悦の『直観』 美を見いだす力」

2019年1月11日(金)- 3月24日(日)

それまで顧みられることのなかった、朝鮮陶磁、木喰仏、日本の民藝などに次々と美を見いだしていった柳 宗悦(1889-1961)。その前人未到の業績を可能とさせたものは、ほかならない柳の「直観」でした。柳は、「直観とは文字が示唆する通り『直ちに観る』意味である。美しさへの理解にとっては、どうしてもこの直観が必要なのである。知識だけでは美しさの中核に触れることが出来ない」と、そして「何の色眼鏡をも通さずして、ものそのものを直かに見届ける事である」と述べています(「直観について」1960年)。
本展では柳の眼差しを追体験できるよう、説明や解説を省き、時代や産地、分野を問わず、柳が蒐めた名品を中心にして一堂に展示されています。

「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」では、展覧会ディレクターの深澤直人が「作者が誰かとか、いつどこでつくられたのか、とかいった情報は必要ない。ただ純粋にその魅力にくぎ付けになる。『これはヤバイ』と」と語る民藝。
開催中の二つの展覧会で、その美しさに向き合ってみてはいかがでしょうか。

会場・主催:日本民藝館

*「柳宗悦の『直観』 美を見いだす力」の入場券(半券も可)のご提示で、「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」の入場料が100円引きになります
*「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」の入場券(半券も可)のご提示で、「柳宗悦の『直観』 美を見いだす力」の入場料が100円引きになります
*いずれも1枚につき1回1名限り有効、他の割引との併用不可

>>日本民藝館ウェブサイト