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2020年10月16日よりはじまる企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
この特別寄稿では、本展オープンに先駆け、展覧会ディレクター ドミニク・チェンが自身の半生と翻訳について語ります。前編では、いくつもの言語が飛び交う環境を出自にもつチェンが培ってきた「翻訳」や、自身の「翻訳欲」の遍歴をたどります。

わたしの家では、幼い頃から「翻訳」が日常生活を満たしていました。アジア、ヨーロッパ、アメリカに散り散りになった父方の家族と会う時、そこでは英語、フランス語、台湾語、ベトナム語、そして日本語が飛び交っていたのです。わたし自身は東京生まれの東京育ちですが、幼稚園からフランス人学校に通い、授業中はフランス語、放課後は日本語を話して過ごしました。
このような家庭環境で育ったせいか、言語とは唯一無二のものではなく、時と場合によって複数を使い分けるものという認識が自然に生まれました。そして同時に、ある言語で表せられる感情は、必ずしも他の言語に翻訳できないというもどかしさも味わったのです。中学からはパリに移り住み、大学はカリフォルニアで過ごして、その後は日本に戻ってきましたが、どこで生活していても自分が帰属すべき「母語」がひとつに確定しない、という感覚と共に生きてきました。

言語と言語のあいだには、翻訳が不可能となる際(きわ)と、不思議と意味が通じあうあわいの、二つの領域が存在します。大人になるまでには、越えることのできない言語の境界に翻弄されてきましたが、表現活動を行うようになってからは「いい加減」に意味が通じることを徐々に楽しめるようになってきました。
もうひとつ、わたしの翻訳観に大きな影響を与えたのが、子どもの頃から抱えている吃音の症状でした。話したい言葉は頭のなかでプカプカ浮かんでいるのに、どうしても声にならない。そこで仕方なく採られた戦略が、別の言葉に言い換えることでした。同じ言語内の、もっと発音しやすい類語や縁語を瞬時に検索する癖がついたわけですが、何気ない言葉を吐くという日常の些細なコミュニケーションのひとつひとつが翻訳行為だと言えます。
だからわたしは、人の話を聞いたり、本を読んだりすることが大好きになりました。誰が何語で話していようと、内容そのものへの興味に加えて、当人が「何を翻訳しようとしているのか」というプロセスにも関心を持つようになったのです。
ある人が任意の言語で話している時、その人は自分の体験を通じて感じたことを、相手の知っている言葉に「翻訳」して話している。同時に、その翻訳行為から常にこぼれ落ちる意味や情緒もある。その隙間をなんとか埋めようとする仕草に、翻訳する人固有の面白さが表出する。すると、たとえ吃音に悩まされていなかったとしても、誰しもが表現のもどかしさを生きているのだと実感するようになり、人と話すことがとても楽になったのです。

誰かに何かを話したい、伝えたいと強く思う時、わたしは自分の感覚を翻訳しようとしています。それには世間話のような、他愛のない会話も含まれるが、非常に強い「翻訳欲」に駆られる時もあります。わたしは、誰に頼まれるわけでもなく、一人で勝手に、徹夜をしてでも、あるテキストを別の言語に翻訳したくなるのです。たとえば、フランスの哲学者のインタビュー映像や、パリの爆破テロの際に妻を喪(うしな)った男性のFacebookの投稿、子どもの頃から聴いてきたフランス語のラップの歌詞、シュールレアリズムの詩人ゲラシム・ルカの朗読など、さまざまな表現を衝動的に日本語に訳してきました。その一部は公開し、一部は誰にも見せずに手元に取ってあります。そういう時に私を突き動かしている動機の正体は、それ自体が目的の「翻訳欲」としか呼びようのないものなのです。

今年、新潮社から刊行された著書『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』は、わたしの翻訳欲の遍歴をまとめた本です。わたしはこれまで、自然言語間の翻訳から始まり、非言語的な芸術やデザインの表現を経由し、情報技術のプログラミング言語を学んできました。すべて、まだ表現されていない感情を象(かたど)るための新たな「言葉」を生み出す活動です。その途上で、子どもが生まれたことによって、自分がいなくなった後の世界を想像するための「言葉」を探す過程を記述しました。本書のメインタイトル「未来をつくる言葉」は、この探索のプロセスを指しています。そして副題では、本来的に翻訳不可能な「わかりあえなさ」、つまり各々に生起する固有の意味や感情を、たとえ分断があるとしてもわかちあうためのコミュニケーションの在り方を喚起しようとしたのです。

ドミニク・チェン『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』
湧き上がる気持ちをデジタルで表現するには?
この「翻訳」で多様な人が共に在る場をつくる
−気鋭の情報学者が新たな可能性を語る。
ドミニク・チェンの思考と実践、そのうねりが一冊に。
発行|新潮社・1,800円+税・208頁(電子書籍版も発売中)
装丁|GRAPH=北川一成と吉本雅俊
編集|足立真穂(新潮社)

>> 後編につづく

初出:yom yom(新潮社)vol.60 2020年2月号「翻訳人生――『未来をつくる言葉』」
このテキストは上記初出記事を基にして21_21 DESIGN SIGHT用に改訂したものです。

2020年10月16日よりはじまる企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
この特別寄稿では、本展オープンに先駆け、展覧会ディレクター ドミニク・チェンが自身の半生と翻訳について語ります。後編では、「わかりあえなさ」から出発するコミュニケーションのあり方、そして同展のコンセプトや展示作品に触れます。

>> 前編に戻る

今日、社会に流通する情報量は増え続け、「いいね」やリツイートといったSNSの論理によって表面的な共感が拡散しています。一方で、同じ街や国に住んでいる者同士にとっても、深いレベルで理解しあえる包摂的なコミュニティの姿は、いまだ蜃気楼のようにおぼろげではないでしょうか。このような状況で、情報技術と人間存在を対立軸で捉える議論は多くあります。他方でインターネットは人の認知を拡げ、それまではアクセスできなかった知識を開放し、他者や世界との新たなつながり方を顕在化させてきました。情報という概念を、ただの事実の羅列としてのデジタル・データではなく、思考を「かたちづくるもの(in-formatio)」と捉えれば、言葉と文字という人類が最初に獲得した「情報技術」とコンピュータをつなげて考えられるようになります。
現在、瞬間的に理解可能なコミュニケーションが社会的に推奨されています。しかし、そのような拙速な方法では、ノイズやエラーといった本質的な価値の源泉が捨象されるだけでしょう。逆に、わかりやすさ、わかりあえるという信念に飛びつくのではなく、わかりあえなさから出発することはできないでしょうか。すぐに解決したり乗り越えようとはせず、ただ互いの差異を受け容れあい、いつか他者の一部が自己を形成していることに気付ける、そのような「未来の言葉」を探したいと思うのです。
わたしはこれまで、子どもの誕生に際して変化した死生観に着想を得て、不特定多数の人々が遺言を執筆するプロセスを集めた作品「Last Words / TypeTrace」や、発酵微生物とコミュニケーションしながら共生するためのインタフェース「NukaBot」といったプロジェクトに携わってきました。それらはどれも、人工知能やインターネットを活用しながらも、遅くて、非効率だけど、互いの気配や息遣いに注意を向きあうための「言語」です。人が、使う言葉によって、そしてその言葉の中で、かたちづくられるとすれば、わたしたちは自らが望む姿に変化していくための言葉を生み出すこともできるはずです。それはしかし、自分や他者を他律的に変えてしまおうとする計画であってはなりません。他者との自然な交わりのなかで、自ずから、相互に変わるべくしていつのまにか変わっている。そのような自然のプロセスを生きるための「言語」の姿を浮き上がらせたいと思います。そのためには、異質な他者同士が互いの言葉を翻訳しあうことが必要になるでしょう。

dividual inc.「Last Words / TypeTrace」
遠藤拓己とのユニットdividual inc.の作品。あいちトリエンナーレ2019に出展、SNS上では「#10分遺言」のハッシュタグを用いて2300人から遺言の執筆プロセスを集めた。
Ferment Media Research「NukaBot v3」
発酵デザイナー小倉ヒラク、研究者ソン・ヨンア、プロダクトデザイナー守屋輝一、三谷悠人、関谷直任と共同で研究開発を行っている。ぬか床の中に棲む無数の微生物たちの発酵具合を音声に翻訳するこのロボットは、トランスレーションズ展にも出展される予定

以上のように「翻訳」について考えながら、21_21 DESIGN SIGHT企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」の展覧会ディレクターを務めています。今は、参加アーティストやデザイナー、研究者の作品展示を通して、来場者の「翻訳」の定義が変化したり、増えたりしていける展示空間を目指しています。
展覧会の全体的な流れとしては、まずは自然言語の翻訳を体感することから始まります。Google社と協同で、機械翻訳の情報処理過程を体験的に理解できるインスタレーションを制作しているほか、多言語話者が作るクレオール〔混合言語の一種〕、「翻訳不可能な言葉」の多言語データベースといった自然言語をテーマにした作品が並びます。続いて、非言語の感覚同士の翻訳が登場する。モールス信号や手話を使った翻訳、スポーツを別の行為に翻訳するプロジェクト、そして言葉にしづらいモヤモヤを会話とグラフィックレコーディングによって解きほぐすワークショップ映像が展示されます。そして後半では人間と微生物や動植物といった、人間以外の存在との間での翻訳をイメージさせられる展示構成になっています。

ペイイン・リン「言葉にならないもの−第4章:個人的な言語」
複数の言語が話される家庭や環境では、意思疎通において、言語が混ざり合う。そうして生成された言語を「クレオール」と呼ぶ。本映像作品では、クレオールを用いる人々が、自らの物語を紡ぎ、語る様子を紹介する。
伊藤亜紗(東京工業大学)+林 阿希子(NTTサービスエボリューション研究所)+渡邊淳司(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)「見えないスポーツ図鑑」
プロアスリートの感覚を誰でも追体験できるよう、日用品を使った動作に翻訳するプロジェクト。画像は、手ぬぐいを用いた柔道観戦体験の様子。

二度の延期を経てようやく開催される本展の開始が今から待ち遠しいです。来場者の皆さんにも「翻訳」の広がりを想像し、「わかりあえなさをつなぐ」可能性を実感してもらえるように、引き続き展示の準備を進めていきます。

初出:yom yom(新潮社)vol.60 2020年2月号「翻訳人生――『未来をつくる言葉』」
このテキストは上記初出記事を基にして21_21 DESIGN SIGHT用に改訂したものです。

写真:望月 孝

ドミニク・チェン:
1981年生まれ。博士(学際情報学)。特定非営利活動法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現・コモンスフィア)理事、公益財団法人Well-Being for Planet Earth理事、NPO soar理事。NTT InterCommunication Center[ICC]研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系准教授。一貫してテクノロジーと人間の関係性を研究している。2008年度IPA(情報処理推進機構)未踏IT人材育成プログラムにおいて、スーパークリエイターに認定。日本におけるクリエイティブ・コモンズの普及活動によって、2008年度グッドデザイン賞を受賞。著書に『謎床』(晶文社)、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』(フィルムアート社)など多数。訳書に『ウェルビーイングの設計論:人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社)など。

開催中の企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」は、展覧会ディレクター 田川欣哉が自身の経験から、世代や領域の異なる「つくる人」の結節点となることを目指し、実現しました。田川とともに本展の企画を進めてきた21_21 DESIGN SIGHTスタッフが、本展に込められた願いを語ります。

今回は、「㊙展」の指針である、展覧会ディレクター田川欣哉さんの「ディレクターズ・メッセージ」より、私が心に残っている2つの箇所についてお話をしたいと思います。まずはメッセージ冒頭から。

"私は二十代のとき、とても幸運でした。たまたまの出会いから、山中俊治さんのアシスタントになり、そこでの仕事を通して、山中さん、佐藤 卓さん、原 研哉さんら日本デザインコミッティーメンバーと接点を持つことができました。"
(ディレクターズ・メッセージ冒頭より抜粋)

ここで印象に残ったのは「たまたまの出会い」という言葉です。田川さんのインタビューでも詳細が語られていますが、当時学生だった田川さんは、山中俊治さんの授業を受けた後、「今度、(山中さんの)事務所に遊びにお邪魔していいですか」と尋ねます。自身の学生時代を「そんなに積極的な生徒でもなかった」と振り返る田川さんですが、その後、口約束だけに終わらず実際に山中さんの事務所を訪ねたのでした。

田川さんも「あのときたまたま行かなかったら、どうなっていたのかな」と語っていますが、あの時の「たまたまの出会い」がなかったら、本展はきっとこのような形にはなっておらず、見方を変えれば「㊙展」の原点は、田川さんの学生時代にまで遡ることになります。

26名のコミッティーメンバーに、プロジェクトや人との出会い、制作プロセスについてお話を伺う中でも、このような「たまたま」はよく耳にしました。

しかし、これらは、単に、福引にあたるような「幸運」ということではなく、日々、様々なことを感じ、新しい世界と出会い続ける中でものをつくる人が、ふと過去を振り返った時に感じる感覚なのではないかと思います。

もう一つ印象に残ったのはこちらです。

"日本デザインコミッティーのメンバーがこれまで蓄えてきた㊙情報とも言える仕事の方法論・哲学・品質を、おおらかに一般開放することで、日本の次世代にJAPAN DESIGNの遺伝子を伝えていければと思います。"
(ディレクターズ・メッセージより抜粋)

「おおらかに一般開放する」という言葉。

この「おおらかさ」は、展覧会で集まった多種多様な「原画」や、その公開方法に表れています。

「原画」には、「完成品一歩手前」のものや「クライアントへプレゼンした」ものだけではなく、日々書きためているようなものも含め、試行錯誤と葛藤ののち大きな飛躍をしたもの。完成はしなかったものの、ずっと後の機会に生きてきたもの。ただただ手が動くことにより表出されたものなど、人やモノとの出会いで変化したり、行きつ戻りつ、そして広がりつつ生み出されてきたものの数々がありました。

そして、田川さんは前掲のインタビューにおいて「観た人の頭の中で(化学反応が)勝手に起こることになるので、それの回数と種類を豊富な状態にしておきたい」と話しています。
会場での体験の他にも、ウェブでのアーカイブやインタビュー公開など、時間や空間を超えたタッチポイントを設定し、観た人聴いた人が自律的に想像力を働かせることができる場を設けています。

「たまたまの出会い」からはじまった二十代の経験を宝物とし、その豊かな経験を次世代につなげようとした「おおらかな」試みには、後に「必然」となるかもしれない「偶然」の出会いに対する優しい眼差しを感じます。

「マル秘展」での出会いが、皆様の未来に繋がることを願っています。

21_21 DESIGN SIGHT 中洞貴子

企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」は、新型コロナウイルス感染拡大の防止のための臨時休館を経て、2020年6月1日より展示を再開しました。
人々の生活や価値観が変わりつつある今、ものづくりの現場に立つ「つくる人」は、何を感じ、考えているでしょうか。
ここでは、デザインやものづくりの現場で活躍する本展企画チームのメンバーからのメッセージを紹介し、次の世代の「つくる人たち」にとってのインスピレーションの種となることを願います。

田川欣哉(展覧会ディレクター)
刻々と振り子のように振れて変化するニューノーマルの時代、デザイナーにとっても、人工物・システム・都市・移動など人間生活のあり方を根本から見直す機会となっています。長期視点・俯瞰視点に立ちながらも、個々の課題についてはプロトタイピング的に取り組む速いリズムが必要です。だからと言って、クオリティの低いものが許容されるわけでもありません。分野を越えた協業や統合的アプローチも、デザインの果たし得る大きな役割となるでしょう。何も諦めずにやり続けられるか。プロフェッショナルとしての姿勢が問われています。

佐藤 卓(グラフィックデザイン)
語りかけると、AIが何でもしてくれる。自分の行動も価値観も把握されていて、先を読み、前もっていろいろと用意もしてくれる。そうなると視覚によるインターフェイスデザインも最小限になっていく。見える部分より見えない部分のデザインが重要になっていく。見えないものが我々の生活に大きく影響するという意味では、新型コロナウイルスも同じである。見えない恐怖により、今人は、見えているという安心感に一番有り難さを感じていると思うが、それは逆にいえば、今まで視覚による情報に頼り過ぎていたともいえる。人には計り知れない豊かな感覚が宿っていることを、このようなときにこそ再認識して、次のデザインの可能性を探れないだろうかと思っている。

中原崇志(会場構成)
コロナ禍の影響で、私の関係する展覧会やイベントも中止や延期を余儀なくされたものが多く、今でも元通りの状態での開催は難しい状況が続いています。
予想していなかった事が起こり、展覧会やイベント等多くの人が同時に体験するという行為を見直す模索が、進行中のプロジェクトでも進んでいます。そういった中で、自粛中にWEB上のバーチャルな世界での試みが活発になってきました。
これまでリアルな物質的な体験を通して文化を伝えてきましたが、改めてリアルとバーチャルな体験を見直す機会となっている気がします。
社会的に揺れ動いている今だからこそ、リアルな固定された価値とバーチャルな運動性のある価値が連動することで新しいミュージアムの形を生み出せる機会と捉えています。

土田貴宏(テキスト)
オルタナティブな未来を提示して議論や思索を喚起するスペキュラティブデザインという手法がありますが、現在は半年前から見るとオルタナティブな未来そのもので、実際に多様な議論や思索をもたらしています。この状況に逆行したり、ただ適応するより、スペキュラティブデザインの目指すところが「望ましい未来」であるように、思索を糧として前向きな変化を意識したい。個人のライフスタイルも、国や政治のあり方も、そんな時機にあると思います。

DRAWING AND MANUAL 菱川勢一(映像)
ひとまずは未曾有の事態にありながら
お互い元気でいられることを喜ぶ光景が毎日のようにあちこちで見られます。
これは純粋創作の現場においてかつてないほど美しい光景とも言えます。
新しい発見というより、再発見に近い部分で知恵を絞り合う。
わたしが身を置いている映像や教育の分野で「優しくなれる」ことこそが
ものをつくる現場において重要で、ないがしろにしてはいけないことだと感じています。
博愛と互助の気持ちがものづくりの原点になったのだとひしひしと感じている昨今です。
そして近い将来、触れ合うことの喜びを再発見したい。

面出 薫(照明監修)
㊙展では会場の照明デザイン監修を行いました。会場全体は暗くしながら、快適な鑑賞の流れができるように工夫しました。
快適な光にこだわることが大切です。建築空間、屋外環境、都市空間でさえ、いい光に出会うと見違えるほどの品質になるのです。
光にこだわると美男美女が増えます。美味しい食卓に出会えます。薄暮の街が美しくなります。光の足し算掛け算ではなく引き算が必要な時代を迎えています。陰影のデザインの時代を迎えています。

21_21 DESIGN SIGHTの公式Vimeoアカウントでは、これまでに開催した企画展の映像作品を、2020年9月30日までの期間限定で特別公開しています。展覧会場でご覧いただいた方も見逃した方もこの機会にお家でお楽しみください。

「テマヒマ〈東北の食と住〉」
"TEMA HIMA: the Art of Living in Tohoku"

トム・ヴィンセント、山中 有
Tom Vincent, Yu Yamanaka

企画展「テマヒマ展〈東北の食と住〉」
Exhibition "TEMA HIMA: the Art of Living in Tohoku"
2012年4月27日 - 8月26日

*本映像はBLUE DOCUMENTARYより販売中のDVD『テマヒマ〈東北の食と住〉 TEMA HIMA: THE ART OF LIVING IN TOHOKU』に収録されている映像を著作権者である山中 有、トム・ヴィンセントおよび販売者の許可を得て、公開しています

「白姓」
"HAKUSHO"

山中 有
Yu Yamanaka

企画展「コメ展」
Exhibition "KOME: The Art of Rice"
2014年2月28日 - 6月15日

*本映像はBLUE DOCUMENTARYより販売中のDVD『白姓 HAKUSHO』に収録されている映像を著作権者であるBLUE DOCUMENTARY、および販売者の許可を得て、公開しています

「12組による雑貨の映像ドキュメンタリー」
"Documentary film of 12 Exhibitors"

島本 塁/玄 宇民(CGM)
Rui Shimamoto / Woomin Hyun (CGM)

企画展「雑貨展」
Exhibition "ZAKKA -Goods and Things-"
2016年2月26日 - 6月5日

「Khadi インドの明日をつむぐ - Homage to Martand Singh - 」
"Khadi: The Fabric of India's Tomorrow- Homage to Martand Singh -"

岡本憲昭
Noriaki Okamoto

「Khadi インドの明日をつむぐ - Homage to Martand Singh -」展
Exhibition "Khadi: The Fabric of India's Tomorrow - Homage to Martand Singh -"
2018年4月18日 - 5月20日

「民藝 MINGEI -Another Kind of Art」
"MINGEI - Another Kind of Art"

岡本憲昭
Noriaki Okamoto

企画展「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」
Exhibition "MINGEI - Another Kind of Art"
2018年11月2日 - 2019年2月24日

「起き上がるカブトムシ」
"Affordances of Beetle Rolling Over"

岡 篤郎(映像)、佐々木正人(監修)
Tokuro Oka (Movie), Masato Sasaki (Exhibit Supervision)

企画展「虫展 −デザインのお手本−」
Exhibition "Insects: Models for Design"
2019年7月19日 - 11月4日

本年開催を予定している「AUDIO ARCHITECTURE in 台北」に関連して台湾を代表するデザイン雑誌『La Vie』に、ディレクターの中村勇吾と、21_21 DESIGN SIGHT館長の佐藤 卓のインタビューが掲載されています。
この特集では、デザイン・アート・建築・ファッションなど多角的視点からキュレーションについて紹介され、当館以外には、V&A博物館(イギリス)、Vitra Design Museum(ドイツ)、メトロポリタン美術館(アメリカ)、ヴェネツィア•ビエンナーレ(イタリア)など各国の企画展が取り上げられています。
中村はAUDIO ARCHITECTURE展の企画意図や特徴について、佐藤はこれまでの企画展を事例に21_21 DESIGN SIGHTの特徴について語っています。
2020年3月初旬に行われた両名の書面インタビューと合わせて、ぜひご覧ください。 また、ウェブサイトでは、記事内容の一部が紹介されています。

>> La Vieウェブサイト

展覧会ディレクター 中村勇吾

—《AUDIO ARCHITECTURE展》を企画したきっかけを教えてください。どうして「音」を展覧会のテーマにしたのでしょうか?

この展覧会の最初の舞台となった21_21はデザインをテーマにした展示施設で、日常のさまざまなものを「デザイン」という観点から捉えています。その観点からすると、当然、音楽もデザインと捉えることができます。私は音楽が好きで、21_21ではこれまで音のデザインをテーマにした展覧会はなかったので、是非やらせて頂きたいと思いました。

—一般の人は音と建築を連想することは少ないと思いますが、どうして音と建築が繋がったのでしょうか?

ショーン・レノンが小山田圭吾さんの音楽を評した文章の中で、"He paints a kind of audio architecture"という言葉を見つけました。それきっかけで、音楽は「時間軸上に構築された聴覚的な建築」と捉えることができるし、そこをテーマとした展覧会もできると考えました。

—今回の展覧会では小山田圭吾様が作曲しています。この曲は展覧会でどのような役割となっていますか? 小山田様とは、どのようにしてコラボレーションが実現したのでしょうか?

上記のようなきっかけで展覧会を構想したこともあり、まず一番最初に小山田さんに展覧会の為の楽曲提供をお願いしに行きました。私は小山田さんと『デザインあ(Design Ah!)』という子供のための教育番組や、彼のミュージックビデオ、ライブなどで共同作業をしていたこともあり、今回の展覧会についても快諾して頂きました。

—異なるバックグランドを持つ、8組のアーティストが展覧会で音をビジュアル化させています。中村さまは、アーティストたちが創作している時に、アーティストたちとはどのように関わりましたか? アーティストたちにアドバイスなどされたのでしょうか?

作家の方達やインテリアデザイナーの片山正通さんたちと話しながら、展覧会作品が共通して備えるべきフォーマットを決めました。すべての要素が音楽とシンクロしている、無限にループする、などといった基本的なルールを決めて、あとは完全に作家にお任せしました。私が初めて作品を見たのは展覧会オープンの前日でした。

—展覧会では、幅24メートルの大型スクリーンに、8組の気鋭の作家が、それぞれに楽曲を解釈して制作した映像が繰り返し流れています。没入体験を使った展覧会に対してどのような意図や考えがありますか? 没入体験を使った展覧会をプロデュースする際に「これは絶対譲れない!」と思う点はどこですか?

私自身は特に没入体験に拘ったわけではなく、他にもさまざまな展示デザインのアイデアがありました。没入型としたのは片山正通さんのアイデアです。龍安寺の縁側から石庭を眺めるかのように、映像の庭を眺める、という案でした。当初案では一段低い床を作り、縁側から映像を見下ろすかたちで考えていました。予算の都合上断念しましたが、これを諦めたかわりに、参加者自身が映像の中に入れるようにしました。

—日本の展覧会はとても多種多様です。歩きながら見られる展覧会や没入体験のある展覧会など、展覧会とお客さんとのインタラクションについて、お考えを教えてください。

展示された作品の面白さは参加者自身の頭の中で発生しているので、彼らがどのような姿勢や態勢で作品と接するかが最も重要だと考えます。そこをデザインするのはデザイナーとしてとてもやり甲斐を感じます。

—《AUDIO ARCHITECTURE展》をディレクションする中で一番の挑戦は何でしたか?どのようにして解決されたのでしょうか? 日本で開催した際のフィードバックの中で、一番印象的だったのはどんなことでしょうか?

お客さんを飽きさせず、ずっと空間に居続けてもらうことです。そのために、曲の長さや構成、作品の順序などを調整しつづけていました。実際、その通りとなり「ずっと居続けてしまう、見続けてしまう」というお客さんの声を聞いて、良かった、と思いました。

—展覧会では音楽、ニューメディア、建築などの専門的な知識のない一般のお客さんとのインタラクションが不可欠です。どのようにバランスを取りましたか?

私は、お客さんをレベル分けして考えるということはしていません。子供番組のデザインをするときも、特に子供向けという意識はなく、大人の自分が見ても面白いと思える密度の高いものにすることを心がけています。マーケティング的な先入観よりも、現実の人間はもっと豊かで多様です。変に手加減せず、面白いと思えるものを全力で出し切ったほうが、お客さん自身でそれぞれの面白さを発見できる余地が増えるのではないかと思っています。

—今回台北の展覧会でのこだわりや工夫点、日本と異なるところなどはありますか?台湾のお客さんにこの展覧会でどのような体験や経験を期待されますか?

日本で行ったものとほぼ同じ構成で実施される予定です。この展覧会はとてもプリミティブなので、国や文化を超えて、面白さや気持ちよさが伝われば、とても嬉しいです。

—2020年に一番期待している展覧会を教えてください。その理由も教えてください

展覧会ではないですが、東京オリンピックを楽しみにしています。私も少しだけ映像で関わっているので、台湾の皆さんにも是非東京にお越し頂きたいと思っています。新型コロナウイルスで無くなってしまうかもしれませんが...。

21_21 DESIGN SIGHT館長 佐藤 卓

—21_21は所蔵品を持たずに、クリエイティブなキュレーション力で世界の注目を集めました。どのような条件があればいいキュレーションになりますか? どんな能力があればいいキュレーターになれますか? ここ数年、芸術祭が流行り始め、古い美術館は大きく挑戦されています。美術館の今の立場と価値に対してどう思いますか?

21_21は、既成のキュレーションという概念には全くこだわってきませんでした。三宅一生さん、深澤直人さん、私、そしてアソシエイトディレクターとして川上典李子さんの4人が中心になり、美術館の企画運営経験のない、ある意味で素人の集まりとして試行錯誤を繰り返してきました。それゆえに、前例のない施設として今があるのだと思います。21_21は、純粋なアートの美術館ではなく、デザインを軸にしているので、そもそもアートを主体にした美術館の在り方とは違う場を求めてもいました。そのような意味でも、デザインの展覧会の可能性を模索しながら進んできたといえます。

古くからある美術館は、貴重な作品を保存し展示するという意味において、今後もあり続けるでしょう。落ち着いた空気感の中で、絵画や彫刻をゆっくり見るのも、豊かな時間だと思います。ただし、それでは人が入らないとすれば、運営面での問題が生じてしまうので、新たな体験の場としてのアイデアが必要になると思います。そのことにより、これからの美術館の個性が出てくれば、それはそれで素晴らしいことだと思います。20世紀型のデザインミュージアムも、名作の椅子や家具を展示解説するという、ある意味伝統的なアートの美術館的存在に習っていたのかもしれません。私達の21_21は、それほど大きな施設ではないので、この制約が新たなデザイン施設を考えるきっかけになっていたとも言えます。

—21_21はデザインの視点から日常生活の物事を捉え、キュレーションを通じてたくさんの人に伝えています。21_21が開催した過去の展覧会の事例をあげて、どのようにデザインの大切さを一般のお客さんに伝えていらっしゃるのか教えてください。

2007年に、水をテーマにした「water」展を開催しました。水は毎日飲むもので、世界中の人が知っていると思っていますが、実はまだまだ知られていないことが多くあります。このことに気づいていただくための展覧会でした。知らない水の世界と人を、デザインで繋いだわけです。つまりデザインそのものを見せる展覧会ではなく、デザインによって、知らない水の世界に誘う展覧会だったということです。今までのデザインミュージアムは、デザインを見せる展示がほとんどでしたが、このようにデザインを捉えると、無限にテーマを設定することができるわけです。
そして2011年、東日本大震災が起きた直後には「東北の底力、心と光。『衣』三宅一生。」展を開催しました。ここでは、東北地方で代々引き継がれてきた染織りの技術を様々な見せ方で紹介。そしてその技術を生かした三宅一生の服づくりも同時に展示し、2012年に開催した「テマヒマ展〈東北の食と住〉」では、東北地方に根付いてきた伝統的な食べ物、そして脈々と受け継がれてきた生活のための道具などを展示させていただきました。東北地方のために、東京の21_21でも何かできないだろうかと話し合って企画したものです。ここでは、特別な芸術品ではなく、時間と手間を掛けて造られた日常品の価値を、改めて見つめ直していただくきっかけを用意したことになります。
2013年には、NHK Eテレの子ども向けのデザイン教育番組『デザインあ』を展覧会にした「デザインあ展」を開催しました。子どもの時からデザイン教育が大切であるという考えから生まれたテレビ番組を飛び出し、身体全体で体感していただく展覧会に発展させました。極あたりまえの日常は、様々なデザインによって成り立っていることを楽しく体験できる場にしました。22万5000人が来場され、この展覧会の開催により、デザインに興味を持つ人が増えていることも確認できました。
そして、2018年から2019年に掛けては、日本の民藝をデザインの視点で見てみようという「民藝 MINGEI -Another Kind of Art展」を開催しました。日本民藝館館長も務める当館ディレクターの深澤直人が中心になって、大変ユニークな発展を遂げてきた民藝の世界を、独自の編集によって展示しました。地域ごとの特色が失われ、物への愛着が希薄になりがちな時代だからこそ、民藝に宿る無垢な美意識と精神性は、新しい時代を生み出すきっかけになるのではないかという想いを込めて開催した展覧会でした。

—21_21は1年に3つの展覧会を実施していますが、テーマはどのように決めていますか?

我々4人のディレクターと21_21のスタッフが定期的に集まり、展覧会のアイデアを出し合って決めています。このミーティングはとても刺激的で、みんな違うフィールドで仕事をしているので、アイデアの方向性が定まらず、思いがけない提案にお互い驚くような場面があります。このことにより展覧会のテーマがあらゆる方向に行き、予測ができない独特の「21_21らしさ」に繋がっているのだと思います。

—21_21の企画展は、内部のディレクターたちがプロデュースすることも、外部のキュレーターとコラボすることもあると思います。21_21のキュレーションシステムやコンセプトを教えてください。また、《AUDIO ARCHITECTURE》をキュレートするきっかけと理由はなんですか?

まず21_21では「キュレーション」という言葉を使用していません。常に「ディレクション」という言葉を用います。そこに確固たる意志はなく、三宅、深澤、私がデザイナーなので、なんとなくディレクションの方が、しっくりくるということだと思います。そして21_21の展覧会は、我々21_21のディレクターが担当する場合もありますが、外部の方にディレクションをお願いする場合もあります。これはその都度、話し合って決めていきます。21_21のコンセプトは、デザインに関わるあらゆる可能性を探り、社会に提案する場ということですから、テーマによっては、デザインと関わりのない人がディレクターになって、デザイナーが補佐するというケースも出てきます。つまりやり方は決めないということです。
AUDIO ARCHITECTURE展は、テーマ設定も含め、まず中村勇吾さんにご相談しました。勇吾さんは、私が『デザインあ』でいつも一緒に仕事をしている方で、とても優秀なクリエイターであることを知っているので、きっと面白いアイデアを出してくれるだろうと予測したのです。そして、「音」をテーマにするという、今までにないアイデアをお出しいただき、結果は大成功でした。我々が思いもしないコンセプトと空間づくりをしてくれたと思っています。

—従来キュレーションという概念はアート業界で使われていたと思いますが、現在はデザイン、建築、ファッション業界もキュレーションが行われるようになっています。佐藤様は幅広い分野においてキュレーターの役割を担われています。キュレーションはデザインにとって、どのような役割だとお考えですか? キュレーションはどのようにしてデザインやデザイナーに影響を与えていますか?

先ほども記述しましたが、私はキュレーションという言葉は使いません。そして21_21内でもこの言葉は出てきません。展覧会ディレクションでいいと思っています。そもそも美術館でキュレーションの仕事もしたことがないので、キュレーションという仕事がよくわかっていません。テーマを決めて、そのテーマに基づいてその都度、進め方を考えます。決まったやり方も一切ありません。それゆえに、結果的にかつてない展覧会に至っているのだと思います。

展覧会ディレクションは、展覧会をまとめていくことに他なりませんが、端的に言えば、知と美の間を繋ぐ作業だと思います。その繋ぎ方が独自だと、展覧会は新しくなります。デザイナーが担当する場合は、美の方は心得ているので、例えば知が足りなければ、テーマに沿ってふさわしい方、例えば文化人類学者などを招き入れればいいわけです。この方法を身につけると、誰とでも組んで展覧会を企画開催できるということです。

—2020年に一番期待している展覧会を教えてください。その理由も教えてください

現在新型コロナウィルス感染症の影響で展示を見合わせておりますが、「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」もおすすめですし、次回開催予定の、ドミニク・チェンさんディレクションによる「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」も、今までにない展覧会になるでしょう。そしてその次の展覧会もまだ情報公開していませんが、特別なものになる予定です。どうぞご期待ください。状況が落ち着いてまいりましたら、是非お越しいただきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症に罹患されたみなさま、およびご家族、関係者のみなさまに謹んでお見舞い申し上げます。また医療従事者はじめ感染防止にご尽力されている皆様に、深く感謝申し上げます。
このたびの世界的な状況に鑑み、INCEPTIONと21_21 DESIGN SIGHTは度重なる議論の末、やむなく2020年6月開催予定の「AUDIO ARCHITECTURE in台北」を、2020年末まで延期させていただくことにいたしました。

台湾の状況を随時共有し、開催に向けて手を尽くしてくださっている主催者のINCEPTION社に、心より感謝申し上げます。開催国の台湾は比較的状況が安定していますが、スタッフの移動に伴う安全性、展覧会のクオリティ、お客様が安心して展示を楽しめる環境を最優先に考え、延期を決断いたしました。巡回展を心待ちにしてくださっているみなさまにはご迷惑をおかけし心苦しい限りですが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

これまでに経験したことのない状況の中で、私たちは誰もが、あたりまえに享受してきた日々の暮らしや身近な人たちとの距離を、とても大切に感じたのではないでしょうか。
21_21 DESIGN SIGHTでは、2007年の開館以前から、日常生活に目を向け、そこに潜む驚きや発見、喜びや希望について考え、発信し続けてきました。2016年にINCEPTION社と開催した「単位展 in 台北」や音楽をテーマにしたこの展覧会も、その延長線上にあります。
「AUDIO ARCHITECTURE in 台北」の開催にあたり、展覧会ディレクターの中村勇吾が示唆した通り、音楽はあらゆる言語や文化を越えて、世界中の人々と感動を共有できるメディアの一つです。デザインにもまた、同じことが言えるのではないでしょうか。展覧会の開催に向けて、音楽とデザインの素晴らしさをより一層楽しく感じていただけるプログラムを計画中です。

我々の好奇心に終わりはありません。状況が落ち着き次第、皆様を最高の「音楽建築空間」に再びご招待できるよう、鋭意準備中です。最新情報は、INCEPTIONと21_21 DESIGN SIGHTの公式ウェブサイトとSNSにてお知らせしますので楽しみにお待ちください。一日も早い事態の終息と、皆様の健康を心よりお祈り申し上げます。

2017年、21_21 DESIGN SIGHT開館10周年を機に誕生したオリジナルグッズ。その後も新しい商品が仲間入りし、現在は13種類を取り揃えています。これらは館長の佐藤 卓がデザイン・監修を手がけています。ここでは、21_21 DESIGN SIGHTショップ担当が、そのオリジナルグッズを紹介します。

21_21 DESIGN SIGHTオリジナルグッズ(Photo: 木奥恵三)

「21_21 DESIGN SIGHT(以下21_21)の思い出を、グッズとして持ち帰って欲しい」、そんな当館スタッフ一同の思いからグッズ制作は始まりました。来館された方にとって21_21の思い出、すなわち象徴的なイメージといえば、21_21のブルーの「プロダクトロゴ」や、安藤忠雄による建築でしょうか。また、館内サインやコンクリートの壁面を写真に収める方もよくお見かけします。

21_21 DESIGN SIGHT外観(Photo: 吉村昌也)

「21_21グラフィックプレート」はそれらを切り取り再編集した、言わば21_21らしさが凝縮された一品です。シャープペンシルなどでなぞってテンプレートのように遊ぶこともできますし、ブックマークとして使用することも可能です。

21_21グラフィックプレート(Photo: 木奥恵三)

今回はこのグラフィックプレートを地図にして、そのアイコンを紐解きながら他のグッズもご紹介したいと思います。

1. まずは左上の台形と三角形、および左下の図形をご覧ください。 向かい合う2つの台形は、ギャラリー1&2とギャラリー3を上空から見たシルエットを表しています。隣の三角形は、鉄板屋根を表しています。下に見える図形は、この三角屋根とサッシを組み合わせた建物のロゴです。この建物のロゴは、チラシの裏面などにも使われています。

建築をモチーフにしたグッズは、自分で組み立てることができる「21_21ミニチュア建築模型」のほか、建築写真などを収めた「21_21ポストカード」、館内のコンクリートの壁面写真をプリントした「21_21トートバッグ」、「21_21ハンカチ」があります。

21_21ミニチュア建築模型(Photo: 木奥恵三)
21_21ハンカチ(Photo: 木奥恵三)

2. 次に、中央の3つの長方形と21_21の数字をご覧ください。
このデザインの基となっているのは、一枚の鉄板からつくられた当館のシンボルである「プロダクトロゴ」です。「21_21ロゴステッカー」と「21_21グラフィックプレート」は、このロゴと同じサイズです。
また、このロゴをモチーフにした「21_21マスキングテープ」もあります。

21_21ロゴステッカー(Photo: 木奥恵三)
21_21マスキングテープ(Photo: 木奥恵三)

3. 最後に、右のサインをご覧ください。
これらは全て、館内に設置されているサインをモチーフにしています。ご来館の際は、どこにあるのか探してみてください。

またシンボルカラーと同じブルーをモチーフにしたグッズには、「21_21サインペン」や「21_21ノートブック(MOLESKINE)」があります。
その他にも、21_21のロゴタイプをあしらった「21_21ペン(LAMY noto)」や、入館証シールをモチーフにした「21_21てぬぐい」や「21_21おちょこ」など、続々と発売をしています。

21_21サインペン(Photo: 木奥恵三)
21_21てぬぐい、21_21おちょこ

一部の商品は、オンラインショップ HUMORよりご購入も可能です。
ぜひこの機会に、お手元にデザインの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

はじめに、この度の新型コロナウイルス感染症に罹患された方々とご家族の皆様に謹んでお見舞い申し上げますとともに、医療従事者の方々の多大なるご尽力に、深く感謝申し上げます。

21_21 DESIGN SIGHTは、2007年に開館して以来、安藤忠雄さんの設計による光に満ちた空間の中で、デザインの可能性を探りながら様々な展覧会を開催してまいりました。チョコレートから始まり、水、人、骨、米、アート、建築、土木、野生、器、雑貨、民藝、虫など、テーマは多岐に渡ります。それは、人の営み全てにデザインは欠かせないものであること。そして、あらゆる事象にデザインという概念を投げ込むことによって、デザインとは何かを問うという、言葉にはできない好奇心の力によるところが大きいように思います。

21_21 DESIGN SIGHTは、美術館やデザイン施設の運営に関わったことがない、ある意味素人の集まりでスタートし、手探りで試行錯誤を続けてまいりました。当館が他にはない個性を持っているとしたら、それはここに起因するのかもしれません。そして開館する準備段階から現在も同様に、定期的にディレクターズミーティングというものを開催しています。展覧会のテーマなども、基本的にこの場で検討されます。このミーティングは、21_21 DESIGN SIGHTの創立者でディレクターでもある三宅一生さん、ディレクターの深澤直人さんと私、アソシエイトディレクターの川上典李子さん、そして当館のスタッフと共に少人数で行っています。この会議の時間がとても面白く刺激的なので、この機会に普段表に出さない舞台裏を、少しお話してみたいと思います。

ミーティング中の発言はいつも、各々の仕事のジャンルには一切こだわらず、まるで脳のシナプスが飛び交うがごとく、ありとあらゆる方向に廻ります。環境問題、経済、注目のアーティスト、医療、人の心理、最先端技術、遊び、教育、福祉など、思いつくアイデアを自由に出し合うので、話がどこへ行くのか常に分かりません。頭の中がグルングルンに回る感じです。そして話が外れて、それぞれの楽しい近況報告の時間に入り、気がつくと1時間が経過していることなど、よくあることです。しかし、この時間が大変貴重なのです。この自由で立場を超えた垣根のないやり取りが、面白いアイデアに繋がったりします。あるアイデアをきっかけに別のアイデアに飛躍することもよくあります。自分の意見を論破しようとする人など誰もいません。お互いを尊重し合いながら進む意見交換は、リズミカルで気持ちがいいとさえ思えます。そして候補がいくつか出ると、まるで発酵させるかのように、先のミーティングまで寝かせたりします。しばらくして、また新たなテーマと比べたりしながら、自然と浮かび上がってくるテーマを選択していきます。あくまで実に感覚的なのです。このような場は、私もいろいろな経験を積んできましたが、ここにしかありません。まるで誰の足跡もないところを一歩一歩進んでいるような感覚です。どうなるかは誰にも分からないけれども、この先へ行ってみようという、まるで森の中を探検しているような気分です。だからワクワクドキドキする。ただし、何の保証もないのに、「絶対いい!」という理由なき確信のようなものを、全員が共有できています。アイデアの閃光を待ちながら進むこの感じは、直接会ってやり取りするからこそ生まれるものであり、皮肉にも現在の日々がこの価値に改めて気づかせてくれました。

21_21 DESIGN SIGHTという場の特徴は、とかく理屈という「意識」が優先する現代社会にあって、珍しく「感覚」というものを最優先しているところにあるのかもしれません。そもそも好奇心は、感覚からくる心の動きですから。当館では、人に内在するこの感覚というものを、今後も大切にしていきたいと考えています。

まだまだ先の見えない状態ではありますが、我々はこの厳しい経験から学ぶべきことを推考し、社会のためにできることは何かを、引き続き模索し続けてまいります。これからも、21_21 DESIGN SIGHTをどうぞよろしくお願い申し上げます。

21_21 DESIGN SIGHT館長 佐藤 卓

Firstly, I would like to extend my sincere condolences to those affected by the coronavirus (COVID-19) and their families, and my deepest gratitude to the healthcare workers for your tremendous efforts.

Since 21_21 DESIGN SIGHT opened in 2007, we have been holding exhibitions that explore the possibilities of design, in a light-filled space designed by Tadao Ando. We began with chocolate and moved through an array of topics from water to human, bones, rice, art, architecture, civil engineering, wild, vessels, sundries, folk crafts and insects. The reason for this diversity is that design is vital to all aspects of the way we live. It is precisely the application of design concepts to all phenomena that has brought us to reflect on the nature of design. This initiative has continued largely because of the power of curiosity for that which cannot be expressed in words.

21_21 DESIGN SIGHT was established by a group of amateurs with no prior experience running museums or design institutions, so it was a matter of feeling our way around, of trial and error. Perhaps that is why this venue has such a unique character. Moreover, ever since the time of preparing to open, we have held regular directors' meetings. This is where the themes of upcoming exhibitions are considered. These are quite small meetings involving 21_21 DESIGN SIGHT founder Issey Miyake, directors Naoto Fukasawa and myself, as well as associate director Noriko Kawakami and staff. These meetings are exciting and stimulating events. I would like to take this rare opportunity to go behind the scenes.

In all of our meetings, speakers roam in all directions, regardless of the kind of work they are doing. It sends the synapses of the mind into overdrive. In this meeting of minds, no topic is off the table, be it environmental issues, the economy, a hot artist, health, human psychology, the latest technology, play, education or welfare. Nobody knows where the conversation will lead. It makes the head spin. At the end, we go off topic and enjoy updating each other on what has been happening. Often before we know it, an hour has disappeared.
However, this time is precious. This freewheeling exchange, in which we leave our professional positions to one side, leads to exciting new ideas. One idea often triggers another. Nobody tries to strongarm others over to their point of view. It is an exchange of opinions held with the greatest of mutual respect - a rhythmical and pleasant gathering. And if there are a number of options for topics, it is left to ferment until the next meeting. After a time, they are compared with new topics and a choice is made from the naturally forthcoming ideas. It is always an intuitive process.
This kind of forum is something I have only seen here, even though I am an experienced person. It is like walking into the unknown, without any footprints to follow. It feels like an adventure through the forest where nobody knows what will happen next and we are just following our instincts. That is why it is so exciting. However, every one of us shares the faith that an idea is a good one, even if there are no guarantees. Illuminated by our ideas, it is in these very face-to-face meetings that generate our ideas. The situation in which we find ourselves today has ironically driven home to me their true value.

The unique character of 21_21 DESIGN SIGHT perhaps lies in the fact that rather than raising logic and rationality on a pedestal as in modern world, this is a rare organization where intuition reigns. That is because curiosity is essentially an emotion stimulated by the senses. Here at 21_21 DESIGN SIGHT, I hope that we continue in future to honor the value of intuition that is in all of us.

The future is far from clear, but we will continue to explore what we can offer society as we take stock of what we can learn from this difficult experience. Thank you for your ongoing support of 21_21 DESIGN SIGHT.

Taku Satoh
Overall Director, 21_21 DESIGN SIGHT