2011年10月 (7)

IstoÉ Platinumに掲載されました

9月16日から開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展。ブラジルの雑誌IstoÉ Platinumにてご紹介いただきました。

IstoÉ Platinum
IstoÉ Platinum

「アーヴィング・ペンと私」 vol.5 平野啓一郎

9月16日から開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。


人や職業の典型をとらえる収集家のような写真


──平野さんは、ペンさんよりアヴェドンの方がお好きという話を以前どこかで読んだのですが。

平野啓一郎(以下、平野): 
え?そんなこと言ってましたっけ(笑)。アヴェドンはペンのことを一生認めなかったらしいですが、まったく別の才能ですよね。
ペンの写真の世界ってコレクションの世界だと思うんです。「収集」という意味での。写真家は、多かれ少なかれコレクター気質があると思います。風景や人物をどんどんストックしていくわけですから。でも、そのなかでもペンは特に強い。僕が一番よく見たペンの作品は『Small Trades』のシリーズ。普通の町中にいる様々な職業の人のポートレートを撮っているんですが、あれをずっと見ていると昆虫標本とか、街のおもちゃキットにある消防士さんとかパン屋さんとかお肉屋さんのような、そんなものを思い浮かべるんです。全部同じ背景にして、フォーマットはまったく同じだけれどコンテンツがちょっとずつ違うものを集める、写真家の快感が写真に表れているような気がするんです。

その職業の典型を際立たせるポイントとしては「姿勢」があると思います。ペンは被写体に道具を持たせているんですよ。新聞を配るとか、バケツとか、牛乳瓶とか、カメラの前で、ある職業の典型を演じるのは難しいと思いますが、道具を持つことによって、いつもの振る舞いができる。一方で、著名人のポートレートを見ると、パン屋とかの職業ではなくそこに本人の個性が出てくる。コクトーであり、マイルスでありピカソ、同じフォーマットの中からその人そのものが浮かび上がってくる。アーティストだから自分を演じきれる、それはさすがだと思います。ペンの写真を見ているとそれがすごくよくわかるんです。

──三宅一生さんとのコラボレーションの作品でも、同じ白バックのフォーマットで多くの服が撮られています。

そうですね。「収集家」としての感覚が一生さんの作品を撮って行く時にもあったんだと思います。ペンが街で働く人を撮っている時は、すでに知られているジャンルの職業の典型をコレクションしていった、あるいはアーティストの典型的な表情を撮っていた。そういう意味では、一生さんの服はまったく見たことがなかったものなんじゃないかと思う。それを同じ白バックというフォーマットで一つずつ撮っていく時に、すごく面白かったんだと思うんですよ。だって、この服は「新種」でしょ?蝶々とかで言ったら。驚きを持ってコレクションの撮影に挑んでいたのだと思います。

──平野さんの近況を教えてください。

講談社の雑誌モーニングで小説の連載を始めました。タイトルは『空白を満たしなさい」っていうもので、よくアンケートとかテストとかで、「次の空白を満たしなさい」というのがあると思うんですが、その言葉が全体のストーリーを引っ張っていくような小説です。震災があって、親しい人が亡くなったり、突然周りに大きな空白ができたりして、生きて行くためにはその空白を満たしなさいというプレッシャーがあると思うんですが、そうすること自体がいいのかどうかということも含めて、「空白を満たしなさい」という言葉について問えればと思っています。ぜひ手に取ってみてください。

(聞き手:上條桂子)

2011年11月25日に21_21 DESIGN SIGHTで開催された展覧会関連プログラムに平野啓一郎が出演しました。
トークの様子は動画でお楽しみいただけます。
トーク「存在とかたち」の動画を見る



Keiichiro Hirano
写真:小嶋淑子

平野啓一郎 Keiichiro Hirano

小説家
1975年愛知県生れ。京都大学法学部卒。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、2002年発表の大長編『葬送』をはじめ、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。著書は『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』、『ド-ン』、『かたちだけの愛』『モノローグ(エッセイ集)』、『ディアローグ(対談集)』など。2011年9月1日より、『モーニング』にて長篇小説『空白を満たしなさい』連載開始。

『空白を満たしなさい』

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【動画】 衣服、写真、デザインの関係

2011年10月23日に行われた、グラフィックデザイナーの佐藤 卓と美術史家の伊藤俊治によるトーク「衣服、写真、デザインの関係」の動画をご覧頂けます。


「アーヴィング・ペンと私」 vol.4 ヴィンセント・ホアン

9月16日から開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展にあわせ、各界をリードするクリエーターの方々に、ペンの写真の魅力について語っていただきます。


ペンの「静」な生き方に学ぶ


──ホアンさんは、実際にペンさんのスタジオを訪ねたご経験があるということなんですが、そのエピソードをお聞かせください。

ヴィンセント・ホアン(以下、ホアン): 
そうですね。95年にNYへ行く機会がありまして、当時僕はジョージ・ホルツのアシスタントをしていたんですが、一度は憧れのペンに会いに行こうと思い、スタジオを訪ねていきました。お会いした時に聞かれて驚いたのは「あなたは私に何をしてくれるんだ?」って言われたことです。普通は逆で、アシスタントにそんなことを求めないですよね。彼はそういう自分にないパワーをアシスタントに求めていたのかもしれません。当時、彼のスタジオには6名のアシスタントがいて、さらにウェイティングリストにたくさんの名前が連なっていたような状態だったので、スタジオに入ることは叶わなかったのですが、すごくいい経験になりました。

──その後ホアンさんは、ヘルムート・ニュートンのスタジオでアシスタントをされたそうですが、ペンさんの現場とはまったく違ったのではないでしょうか。お人柄も違いそうですね。

ホアン:ペンさんの撮影現場は実際には見ていないんですが、彼はもともとデザイナーなので緻密に絵作りをして、スケッチで構成を決めてから撮影に入ります。生活もすごく規律正しくて、朝5時に起きて散歩をするところからスタートして、午前中にはすべての撮影を終える。そして、スタジオでは一切音楽をかけないそう。一方、ニュートンは正反対のタイプと言えるでしょう。撮影に関しても、ほとんど即興でスケッチも描かずにその場で決める。また、人物写真にしてもペンは非常にストイックで、モデルをオブジェクトのように扱っています。ニュートンはご存知のように女性好きなので(笑)。その点でも全然違いますね。

──ペンさんの写真から学んだことを教えてください。

ホアン:観察力かな。彼はすごく東洋的な感覚を持っていた方だと思います。日本舞踊のような、柔らかいポーズでも指先まで神経が行き渡っているというような。彼の写真は「静」なんですが、何度見ても飽きない、不思議な写真だと思います。それにはやはり、いかに心を平静に保つかという、彼の生活や生き方が反映されているんでしょうね。もうひとつエピソードがあるんですが、石岡暎子さんがアートディレクションをされたマイルス・デイビスの撮影の際に、マイルスは自分の音楽をかけながら撮影して欲しいと言ったそうなんですが、ペンはそれを断固拒否して、一触即発の状態になったそうです。もちろん石岡さんが仲裁して、撮影は進められたんですが不機嫌になってマイルスがいろんな表情をした。そこをペンは撮ったんですね。だからあんな写真になったという。そこまでストイックなペンの姿勢はすごい。まだまだ追いつけませんが、一歩でもペンの写真に追いつきたいので、まずは規則正しい生活から始めようと努力しています(笑)。

──ホアンさんの最近のお仕事を教えてください。

ホアン:ミス・インターナショナル国際大会の写真集です。昨年の10月〜11月に、中国の四川省で開催されました。ミスコンだけでなく、様々なボランティア活動を記録した350ページの大作です。電子版の発売も予定されています。

(聞き手:上條桂子)



Vincent_Huang.jpg

ヴィンセント・ホアン Vincent Huang

写真家
1958 年、神戸の在日中国人の家庭に生まれ、写真好きの父親の影響で写真を始める。 77 年、ボストン大学ビジネス科入学。 78 年、カンサス・ベーカー大学ファインアート科専攻。 81 年、カルフォルニア大学バークレー校、サマースクール・ファインアート・フォトグラファークラスに参加。 82 年、サンフランシスコ大学アカデミー・オブ・アートカレッジ写真科卒業。
ロサンゼルスで、HELMUT NEWTON、GEORGE HOLZ のアシスタントを経て、フリーランスの写真家として活動を開始。 ニューヨークでの活動を経て86 年、日本に帰国後、ファッション雑誌、広告写真を中心に活動。 現在は、自由が丘に Lotuscalyx Studio (YouTube参照)を所有、ユニークな作家活動を展開中。
http://ameblo.jp/duckbuddha/

ミス・インターナショナルの国際大会より

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THE NEW YORKERウェブサイトに掲載されました

現在開催中の「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展が THE NEW YORKERウェブサイトに掲載されました。
本展に出展中のアニメーション「Irving Penn and Issey Miyake: Visual Dialogue」の 一部がご覧頂けます。
http://www.newyorker.com/online/blogs/newsdesk/2011/09/issey-miyake-irving-penn.html

マイケル・クロフォードによる「Irving Penn and Issey Miyake: Visual Dialogue」のためのドローイングより
Copyright © 2010 by Michael Crawford

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【動画】 アーヴィング・ペンとヴァナキュラー

2011年9月30日に行われた、写真家の石川直樹によるトーク「アーヴィング・ペンとヴァナキュラー」の動画をご覧頂けます。


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