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田川欣哉 (8)

企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」は、新型コロナウイルス感染拡大の防止のための臨時休館を経て、2020年6月1日より展示を再開しました。
人々の生活や価値観が変わりつつある今、ものづくりの現場に立つ「つくる人」は、何を感じ、考えているでしょうか。
ここでは、デザインやものづくりの現場で活躍する本展企画チームのメンバーからのメッセージを紹介し、次の世代の「つくる人たち」にとってのインスピレーションの種となることを願います。

田川欣哉(展覧会ディレクター)
刻々と振り子のように振れて変化するニューノーマルの時代、デザイナーにとっても、人工物・システム・都市・移動など人間生活のあり方を根本から見直す機会となっています。長期視点・俯瞰視点に立ちながらも、個々の課題についてはプロトタイピング的に取り組む速いリズムが必要です。だからと言って、クオリティの低いものが許容されるわけでもありません。分野を越えた協業や統合的アプローチも、デザインの果たし得る大きな役割となるでしょう。何も諦めずにやり続けられるか。プロフェッショナルとしての姿勢が問われています。

佐藤 卓(グラフィックデザイン)
語りかけると、AIが何でもしてくれる。自分の行動も価値観も把握されていて、先を読み、前もっていろいろと用意もしてくれる。そうなると視覚によるインターフェイスデザインも最小限になっていく。見える部分より見えない部分のデザインが重要になっていく。見えないものが我々の生活に大きく影響するという意味では、新型コロナウイルスも同じである。見えない恐怖により、今人は、見えているという安心感に一番有り難さを感じていると思うが、それは逆にいえば、今まで視覚による情報に頼り過ぎていたともいえる。人には計り知れない豊かな感覚が宿っていることを、このようなときにこそ再認識して、次のデザインの可能性を探れないだろうかと思っている。

中原崇志(会場構成)
コロナ禍の影響で、私の関係する展覧会やイベントも中止や延期を余儀なくされたものが多く、今でも元通りの状態での開催は難しい状況が続いています。
予想していなかった事が起こり、展覧会やイベント等多くの人が同時に体験するという行為を見直す模索が、進行中のプロジェクトでも進んでいます。そういった中で、自粛中にWEB上のバーチャルな世界での試みが活発になってきました。
これまでリアルな物質的な体験を通して文化を伝えてきましたが、改めてリアルとバーチャルな体験を見直す機会となっている気がします。
社会的に揺れ動いている今だからこそ、リアルな固定された価値とバーチャルな運動性のある価値が連動することで新しいミュージアムの形を生み出せる機会と捉えています。

土田貴宏(テキスト)
オルタナティブな未来を提示して議論や思索を喚起するスペキュラティブデザインという手法がありますが、現在は半年前から見るとオルタナティブな未来そのもので、実際に多様な議論や思索をもたらしています。この状況に逆行したり、ただ適応するより、スペキュラティブデザインの目指すところが「望ましい未来」であるように、思索を糧として前向きな変化を意識したい。個人のライフスタイルも、国や政治のあり方も、そんな時機にあると思います。

DRAWING AND MANUAL 菱川勢一(映像)
ひとまずは未曾有の事態にありながら
お互い元気でいられることを喜ぶ光景が毎日のようにあちこちで見られます。
これは純粋創作の現場においてかつてないほど美しい光景とも言えます。
新しい発見というより、再発見に近い部分で知恵を絞り合う。
わたしが身を置いている映像や教育の分野で「優しくなれる」ことこそが
ものをつくる現場において重要で、ないがしろにしてはいけないことだと感じています。
博愛と互助の気持ちがものづくりの原点になったのだとひしひしと感じている昨今です。
そして近い将来、触れ合うことの喜びを再発見したい。

面出 薫(照明監修)
㊙展では会場の照明デザイン監修を行いました。会場全体は暗くしながら、快適な鑑賞の流れができるように工夫しました。
快適な光にこだわることが大切です。建築空間、屋外環境、都市空間でさえ、いい光に出会うと見違えるほどの品質になるのです。
光にこだわると美男美女が増えます。美味しい食卓に出会えます。薄暮の街が美しくなります。光の足し算掛け算ではなく引き算が必要な時代を迎えています。陰影のデザインの時代を迎えています。

企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、『Tokyo Midtown STYLE』42号に、展覧会ディレクター 田川欣哉と、デザインエンジニアで、日本デザインコミッティーのメンバーでもある山中俊治のインタビューが掲載されました。
田川は本展の企画意図について、山中は自身のスケッチについて語りました。
下記ウェブサイトでも紹介されています。18-20ページをぜひご覧ください。

>> 東京ミッドタウン ウェブサイト

『Tokyo Midtown STYLE』42号

2020年1月25日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、クロストーク「建築のマル秘 内藤 廣×田根 剛」を開催しました。
日本デザインコミッティーのメンバーである内藤 廣が、ゲストに田根 剛を迎え、「建築」をテーマに語り合いました。モデレーターを、展覧会ディレクターの田川欣哉が務めました。

本トークは、田根が、会場に展示されている内藤の"原画"について、内藤本人に尋ねる形式を用いました。
内藤が自身の持つ二面性を描いたスケッチ「青鬼と赤鬼」には、建築をつくるときの葛藤や矛盾が表れているように感じたと田根は言います。クリエイターである一方、社会との整合性をとる必要もある、建築家という職業。人間を本質的な対象とするため、ものごとを処理したりまとめ上げたりすることと逆のモチベーションもあるはずだと、内藤は答えました。
また、「デザインの領域の再構成」や「ArchitectureとDesign」といったスケッチについては、描かれた図をスタートに、国内外の社会思想やデザインに対する捉え方にも話が及びました。
さらに田根が選んだのは、内藤の手帳に貼られた「民法」の条文。「私権は公共の福祉に適合しなければならない」という一文に、建築やデザインはどう関わるのかという各々の意見を述べました。
トークの最後には、未来に関する議題があがり、世界を取り巻くテクノロジーや新たな技術、モノとコトの関係性などを語りました。

2019年12月13日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、クロストーク「プロダクトデザインのマル秘 深澤直人×鈴木 元」を開催しました。
日本デザインコミッティーのメンバーである深澤直人が、ゲストに鈴木 元を迎え、「プロダクトデザイン」をテーマに語り合いました。モデレーターを、展覧会ディレクターの田川欣哉が務めました。

トークでは、深澤が手がける家具シリーズ「HIROSHIMA」などを例に、デザインの着想、具体化、商品化といったプロセスについて語られました。
マルニ木工との協働で生まれた「HIROSHIMA」のアームチェアは、木目と緩やかなカーブが美しく、シンプルながら精緻なデザインを特徴としています。
深澤のアイデアスケッチには、完成品とほぼ変わらない当初のデザインが描かれていますが、このイメージをそこなうことなく製品化するには、マルニ木工と職人の技術力が欠かせませんでした。
深澤は、このような製造段階での仕事を理解することや、クライアントと対話を重ね、商品を求めている人の視点を得ることが、デザインのプロセスにおいて重要だと述べました。

また、「かたち」ではなく「すがた」をデザインするという深澤は、周囲との調和や雰囲気を重視し、プロダクトを直観的に見ることを大切にしていると言います。
これは、深澤が館長を務める日本民藝館の創立者であり初代館長の柳 宗悦が説いた民藝への眼差しにも通じています。

トークの最後には、参加者との質疑応答が行われる中で、それぞれのプロダクトデザインの展望が語られました。
「良いデザイン」を求める人々が増えることが優れたデザインを生みだす土壌になるとし、デザイナーだけでなくユーザーの意識の変化がデザインの発展につながることを伝えました。

2019年11月30日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連して、田川欣哉、鈴木康広によるオープニングトーク「㊙展のマル秘 −展覧会ができるまで−」を開催しました。
会場で展示しているデザイナー達の"原画"さながらに、実際の会議資料なども公開し、展覧会の企画がスタートしたときから開幕までの道のりが語られました。

本展に"原画"を出展している日本デザインコミッティーのメンバー達に、田川が初めて展覧会のプランを提案したのは、2018年7月。
熊本県で育った田川は、かつては、雑誌などの二次情報を通してデザインに触れていたと言います。のちに上京すると、山中俊治のアシスタントとしてクリエイションの現場に直接立ち会うようになります。そこでものづくりへの意欲を後押しされた経験から、田川は、より多くの人に「生のクリエイションを感じて欲しい」「デザイナーの肉声を伝えたい」と考えました。
その田川の提案に、はじめは賛否の声があがったといいます。そこには「プロセスは人に見せるものではない」という意味も含まれますが、委託の仕事が大半となるデザイナーは、守秘義務によってプロセスを公開するのが難しいという事実もあります。
それでも、田川の意見に賛同してくれたメンバー等がそれぞれの"原画"を持ち寄ると、他のメンバーも興味深そうに見入るようになり、少しずつ"原画"が集まっていきました。

本展では、会場に来られない人にも「デザイナーの肉声」を届けるために、メンバー達へのインタビューをポッドキャストで配信しています。そのインタビューは、田川と鈴木康広が一人ひとりの元を訪ねて収録し、編集せずにメンバーの言葉をそのまま伝えています。自身の専門分野に出会ったきっかけ、仕事を始めた頃のことから、デザインについての持論までが、それぞれの話し方や言葉選びといった個性とともに語られます。
ほぼすべてのメンバーの元を巡った後、二人は、「今はその分野の代表となるような人も、キャリアのはじめには、先人達の中で自分が活躍できる分野を探していたことが印象的だった」と言います。

鈴木は、メンバー達のことを「"わざわざやる"のではない、"避けられない無駄"の壁にぶつかり続けた人達」と表現します。「ここで展示されているスケッチは、僕たちが当たり前だと思っているモノやコトが解決されてきた物証だ」と語りました。

最後に来場者から「個性豊かなメンバーのインタビューを通して、共通している点はあったか」という質問に答え、「自分にぴったりな思考の出力方法を、かなりこだわって研究しているということ。」と田川。続く鈴木は、「その出力方法こそが㊙で、それを考えるということが、ものづくりを始めることにつながっていくのだと思う。」と語りました。

デザイナーたちが、デザインの過程において生み出すスケッチや図面、模型。それらは、多くの人々の目に触れる完成品に比べて、あまり光が当てられません。しかし、そんな「秘められた部分」にこそ、デザインの大切なエッセンスは刻まれています。

2019年11月22日、いよいよ開幕となる企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」では、日本デザインコミッティーに所属する幅広い世代の現メンバー26名によるスケッチ、図面、模型、メモといった多様な「原画」を紹介します。それらを間近で目にすることは、今後のものづくりを担う人々にとって、刺激と示唆にあふれた体験になることでしょう。

展覧会ディレクターにはデザインエンジニアであり、日本デザインコミッティーの最も若い世代に属する田川欣哉を迎え、世代や領域が異なる人々の結節点となり、日本の出会いんの豊かな蓄積を未来の創造へと活かすきっかけになることを目指します。

会場風景(ロビー)
View of Lobby
「原画が生まれるところ」(映像:ドローイングアンドマニュアル)
"Where Original Ideas Are Born" (Film Production: DRAWING AND MANUAL)
会場風景(ギャラリー2)
View of Gallery 2
松本哲夫 展示風景
Exhibit view (Tetsuo Matsumoto)
新見 隆 展示風景
Exhibit view (Ryu Niimi)
隈 研吾 展示風景
Exhibit view (Kengo Kuma)
「作家たちの椅子」
"Chairs Designed by Committee Members"

撮影:吉村昌也/Photo: Masaya Yoshimura

2019年11月22日よりはじまる企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」。1953年の設立以来、すぐれたプロダクトの選定やデザイン展の開催を通して、日本のデザインに貢献し続けてきた日本デザインコミッティーの幅広い世代の現メンバーたちが、創造の過程で生み出したスケッチ、図面、模型の数々を紹介します。

今回のレポートでは、本展映像作品「原画が生まれるところ」の撮影にあたり、メンバーの鈴木康広の研究室を訪れた様子をご紹介します。

2019年9月13日、東京大学先端科学技術研究センター。ドローイングアンドマニュアルは撮影のため、同センター内にある鈴木の研究室を訪ねました。
当日、鈴木は引越しの最中にあり、内装を塗ったばかりという新たな研究室にて撮影は行われました。

2001年から現在に至るまで、ツバメノート株式会社の無罫のノートでスケッチを行っている鈴木。現在は廃版となってしまった、灰色の背表紙のノートを用い、特に使用順を設けず、手に取ったノートの余白に描いていると言います。鈴木は、ノートに描かれた過去のスケッチに偶然出会うことで、当時気づけなかったことが分かると続けました。その後、鈴木が大学生の頃に描いていたパラパラマンガなどにも話が及びました。

デザインの「原画」は、どのような場所で生まれるのでしょうか。本展会場では、「原画」の見方の手がかりとして、日本デザインコミッティーの現メンバー、原 研哉、伊藤隆道、鈴木康広、山中俊治の創造の現場を、ドローイングアンドマニュアルが撮影した映像作品「原画が生まれるところ」を展示します。
メンバー26人の「原画」とともに、どうぞご期待ください。

2019年11月22日に開幕となる企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」。日本デザインコミッティーに所属する26名の現メンバーたちが、多くの人々の目に触れる完成品をつくり上げるまでの過程で生み出すスケッチや模型を紹介する展覧会です。
開催に先駆けて9月17日、メンバーシップやパートナーの方限定のスペシャルトークイベントを開催しました。登壇したのは、展覧会ディレクターの田川欣哉、会場構成を務める中原崇志、テキストを執筆する土田貴宏です。

まずは、田川が自身の仕事を紹介しました。田川が代表を務めるTakramでは、ビジネスとテクノロジーとデザイン、それぞれのバックグラウンドをもった人々がそれらを組み合わせて仕事をしています。

次に、㊙展のコンセプトを固めた経緯を語ります。
20代の頃、デザインエンジニア 山中俊治のアシスタントを務めながら「つくる人」を目指していた田川は、山中が書類の裏などに描くスケッチに刺激を受けました。つくる人が舞台裏で行うアウトプットを間近に見る興奮が、ものづくりを加速する大事な経験であったと振り返ります。
日本デザインコミッティーは、デザイナー、建築家、評論家が自主的に参加し、1953年の設立以来、世代ごとにバトンを受け継ぎ活動を続けてきました。現在、その最も若い世代に所属する田川は、各分野を代表するメンバー達の「秘められた部分」を公開することが、さらに若い世代のクリエイティブを目指す人々の心の栄養となり、日本のデザインの遺伝子を伝えられるのではと考えました。

続いて、中原崇志の解説を交え、計画中の図面やCGを見ながら会場を巡ります。展覧会ディレクターの田川の意図を踏まえながらも、中原自身が展示ひとつひとつをどのように読み解き、空間として表現しようとしたのか説明しました。
土田貴宏は、専門領域、道具、デザイナーの個性によってさまざまな「原画」のあり方を一挙に見られることも本展の大きな魅力、と言います。日本デザインコミッティー創立メンバーの一人、勝見 勝が「建築家とデザイナーと美術家は、汎地球的な規模における人類文明のため、協力を重ねなければならない」と記したように、多様性が日本のデザインを先に進めていくための重要な要素だと、本展の企画チームは考えます。

さらに、展覧会ディレクターの田川が「裏テーマ」とする、フィジカルとデジタルが結合する未来のデザインのかたちにも話は及びます。本展は、40代から90代までの「つくる人」によるスケッチが、デジタル化を前提とする世代のものづくりに出会うことで、分野だけでなくアナログとデジタルの間にある断崖をつなぐきっかけになることも目指しています。
田川は、この世代から世代への「寄付」のような活動が、本展をきっかけに広まれば、と語りました。

この日は、これまでには開幕前に公開されることのなかった、展覧会の企画段階がすみずみまで紹介され、「㊙展」のタイトルにふさわしいイベントとなりました。

㊙展プレイベント「田川欣哉スペシャルトーク」

開催日:2019年9月17日(火)
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ内 インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
登壇:田川欣哉、中原崇志、土田貴宏
主催:21_21 DESIGN SIGHT
協力:公益財団法人日本デザイン振興会