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2015年11月 (9)

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」に関連して、フランク・ゲーリーのインタビューが、『casabrutus.com』に掲載されました。

>>casabrutus.com


『casabrutus.com』

21_21 DESIGN SIGHT企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」の主役、フランク・ゲーリーにスポットを当てた展覧会が都内各地で開催されています。

エスパス ルイ・ヴィトン 東京
「フランク・ゲーリー/ Frank Gehry パリ - フォンダシオン ルイ・ヴィトン 建築展」

2015年10月17日(土)- 2016年1月31日(日)

フランク・ゲーリーの最新作『フォンダシオン ルイ・ヴィトン』は、2014年10月フランス・パリにオープンした文化芸術複合施設です。エスパス ルイ・ヴィトン東京の14回目のエキシビションとなる本展では、「フランスの深い文化的使命感を象徴する壮大な船」とゲーリーが称したこの建築を通して、建築家フランク・ゲーリーとその仕事を辿っていきます。会場では、さまざまな段階の建築模型のほか、完成までに採用された多様な先端技術やドローンを用いて撮影された外観映像、本施設の主軸であるアーティスティックな活動の紹介映像を通してプロジェクトの全貌を公開。フランク・ゲーリーの斬新な創造力と、エスパス ルイ・ヴィトン東京から一望できる東京の建築群との調和が織り成す新たな世界観をご体感ください。

>>エスパス ルイ・ヴィトン 東京 ウェブサイト


© LOUIS VUITTON / YASUHIRO TAKAGI

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」に関連して、本展ディレクター 田根 剛のインタビューが、『Pen Online』に掲載されました。

>>Pen Online


『Pen Online』

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」に関連して、本展ディレクター 田根 剛のインタビューが、『和樂』11月号に掲載されました。


小学館『和樂』11月号より

2015年11月14日、建築家 西沢立衛と現代美術家 宮島達男が登壇し、「トークシリーズ『I Have an Idea』第1回 "ぐにゃぐにゃ" 形成と形態について」を開催しました。

対談は、「フランク・ゲーリーを初めて知ったとき」から始まりました。1980年代、大学生の頃に初期のフランク・ゲーリー建築を知ったという西沢に、宮島が「当時の若い建築家への影響は?」と問うと、西沢は「石を削る彫刻のような発想ではなく、日本の木造建築の考え方に近しいゲーリー建築の影響は特に大きかったのではないか」と答えました。 宮島は、スペインでの展覧会に出展した際にビルバオ・グッゲンハイム美術館を見るためにビルバオへ足を運んだといいます。街の中にビルバオ・グッゲンハイム美術館が突然立ち現れる風景は、それまでに見たことのないものでとても驚いたと宮島が語ると、フランク・ゲーリーの名を世に知らしめたビルバオ・グッゲンハイム美術館の特徴は、しかしそれまでのゲーリー建築とかけ離れたものではなかったと西沢は言います。それでも多くの人を惹きつけたビルバオ・グッゲンハイム美術館は、それまで脱構築主義の文脈でばかり語られてきたゲーリー建築が、抜きん出た抽象性を獲得し、自由にゼロから見ることのできる建築になった作品であったろうと語りました。

話題は、本日のテーマである"ぐにゃぐにゃ"という言葉に移ります。フランク・ゲーリーの素晴らしさは、その適確なスケール感にあると言う西沢。かたちの個性として重要な"ぐにゃぐにゃ"は、ともすればデザインの特徴としてのみ想像されがちだが、フランク・ゲーリーは、空間の機能とボリュームを現実的に捉え、必要な空間の区切り、つまり"ぐにゃぐにゃ"の数を割り出すのだと語りました。

それぞれのゲーリー建築への印象を通じて、フランク・ゲーリーには彫刻的なアプローチをする一面があるのではないかと、「emotion」という言葉を使いながら語り合う西沢と宮島。
宮島はゲーリーの仕事について、パリのルイ・ヴィトン財団の展覧会で数えきれないほどのゲーリーの建築模型を目にして、ヘンリー・ムーアのスタディを連想したと言います。また、人が入ることのできる「何か」として捉えることのできるゲーリー建築は、ニキ・ド・サンファルやオラファー・エリアソンのアート作品にも互いに通じ合うところがあるのでは、とも述べました。
西沢も、ゲーリーは「人間の入るところ」をつくっているのであり、それが「建築」であることを必須としていないのではないか、と同意します。住まう時点では過去になってしまう建築創造を、現在進行中であるように錯覚させるような迫力がゲーリー建築にはあるとも言う西沢。さらに、ゲーリー建築は建材をきっかけに建物を考え始めているのではないかと自論を述べると、その上で彼の建築には、近代建築史のすべてを見て取れると語りました。

さらに西沢は、ゲーリー自邸を例に挙げると、ゲーリー建築を究極のコラージュでありブリコラージュであると表現しました。日常性を起点に必要なものを集めて組み合わせていったような自邸をはじめとするゲーリー建築は、「誰にも『アイデア』の可能性はある」と示唆しているのでは、と語ります。

話題はゲーリー・テクノロジーへ。西沢は、以前フランク・ゲーリーが来日した際に聴いたエピソードを紹介します。かつては優秀な数学者であるゲーリーの親しい友人が、ゲーリーがアイデアの発想段階でつくったオブジェのようなものを定規で測り、図面に起こしていたのだと、ゲーリー自身が語っていたと言います。宮島は、今やアートの世界でも必然のものとなったデジタル・テクノロジーの例を挙げて紹介した上で、それでも細部には人間の手による表現が必要だと語りました。

トークの終わりには、参加者から「以前、オスカー・ニーマイヤーの建築を"色気がある"と表現していたが、フランク・ゲーリーの建築はどうか」と問われた西沢は、「彼の建築には、日本では善悪の線をひいてしまうようなことでも受け入れる懐の深さがあり、人間的な生命の輝きがあると思う」と答えました。

フランク・ゲーリーの建築を、建築家と現代美術家のそれぞれの視点から語り合った二人の会話は、その魅力を建築としてのものに限定しない広い視点でのトークとなりました。

現在開催中の企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」のプレスプレビューで行われた、フランク・ゲーリーのQ&Aセッションの様子が、『10+1 web site』(LIXIL出版)に掲載されました。
日本文化から受けた影響、建築の道を選ぶまでの経緯、近年の活動などを熱く語るゲーリーの素顔をぜひお楽しみください。

>>10+1 web site


プレスプレビュー当日の様子(Photo: 木奥恵三)

開催中の21_21 DESIGN SIGHT企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」では、見る者をあっと驚かせ、同時に強く魅了するゲーリー建築の発想から完成までを紹介しています。アイデアをかたちに変えることによって、人々に感動を与える建築家の仕事。
本展会期中に、東京都内で開催されている建築にまつわる展覧会にもあわせて足を運び、建築家それぞれの魅力を探ってみてはいかがでしょうか。

TOTOギャラリー・間
30周年記念展「アジアの日常から:変容する世界での可能性を求めて」

2015年10月17日(土)- 12月12日(土)

加速度的に日々刻々と日常を取り巻く状況が変動し、明日の姿が見えにくくなっている今、私たちは「建築」にどのような可能性を見いだせるのでしょうか。自然の中の建築を間近に見るヴォ・チョン・ギア、自然と建築のスタディをじかに学ぶチャオ・ヤンとリン・ハオ、建築および日常の与えるさまざまな印象を再現してくれるチャトポン・チュエンルディーモルと大西麻貴+百田有希。本展では、ベトナム、中国、シンガポール、タイ、そして日本と、アジアという共通項で結ばれながらも多様な背景を持つ建築家5組が「アジアの日常」をヒントに、自然と建築と日常の関係を探っていきます。
開設第1回目の展覧会に建築家フランク・ゲーリーを迎えたというTOTOギャラリー・間も、今年で30周年。この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

>>TOTOギャラリー・間 ウェブサイト

企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」は、世間の常識に挑戦する作品をつくり続ける建築家 フランク・ゲーリーの「アイデア」に焦点をあて、彼の思考と創造のプロセスを、数々の模型や建築空間のプロジェクションを通して辿る展覧会です。
本連載では、ゲーリー建築をより深く理解し、その魅力を一層楽しめる展覧会の見かたを本展企画協力の瀧口範子が解説します。


本展会場風景写真:木奥恵三

本展のテーマは、「アイデア」である。建築家 フランク・ゲーリーが、いかにアイデアを得て、それを発展させていくのか。そのプロセスを数多くのオブジェや模型から感じていただけるはずだ。

だが、アイデアもそれが実現にいたらなければ、ただの思いつきに終わってしまう。誰であれクリエーターの活動の大部分は、アイデアを現実のものにしようとするところに費やされているはずである。ことに、自分にしかないアイデア、まだ誰も目にしたことのないアイデアを、社会や技術の制約を超えて実現するのは簡単なことではない。もちろん、フランク・ゲーリーの場合もしかりだ。

ゲーリー建築を目にしたことのある人ならば、標準的な形態を逸脱したこれら建物がどのように実現されたのか不思議に思うことだろう。特注の建材をたくさん使ったのだろう、金と時間をぜいたくに費やしたのだろう、建設現場では作業員に無理強いをして、慣れない危険な取り付けもさせたのだろう。そう想像してもおかしくない。

ところが、現実はそうでなかったことを教えてくれるのが、ゲーリー・テクノロジーズという技術会社の存在である。展覧会会場では、本展ディレクターの田根 剛と技術監修の遠藤 豊がビジュアルデザインスタジオ WOW(ワウ)の協力のもと制作した映像で、そのアプローチと活動を知ることができる。


本展会場風景写真:木奥恵三

ゲーリーがコンピュータ・テクノロジーに出会ったのは、スイスで設計したヴィトラ・デザイン美術館がきっかけだった。そこにある螺旋階段はゲーリーの図面通りに建設されていたにも関わらず折り目ができ、ゲーリーが求めていた、流れるようなスムーズさを欠いていたのだ。二次元の図面で三次元の建物を表現することの限界を感じたできごとだった。

ゲーリーはその後、航空機の設計で用いられているCATIA(カティア)というソフトウェアを知る。流線で構成される航空機は、壁や屋根のある普通の建築とは違って三次元的なアプローチによってしか設計されない。それをゲーリーは自身の建築に利用してみようとしたのだ。

それを初めて試したのが、スペイン・バルセロナに建てられた「フィッシュ」と呼ばれる巨大な魚の彫刻だった。ここでは、魚の躍動感が硬い鉄骨によってつくり上げられた。コンピュータが鉄骨の組み合わせを詳細にわたって算出したおかげだ。

その後、有名なビルバオ・グッゲンハイム美術館でCATIAを本格的に利用する。踊るような力と複雑な構造を持つこの建築は、ゲーリー事務所がコンピュータ・テクノロジーの潜在力を引き出すことによって実現したものと言える。

ゲーリー事務所は、その時々のプロジェクトに合わせてソフトウェアを洗練させていき、テクノロジー部門は後にゲーリー・テクノロジーズとして独立する。会場の映像では、ゲーリー・テクノロジーズがどう建築のプロセスを変えたのか、それによってどう建築家が力を得たのかが語られる。

たとえば、上述のビルバオ・グッゲンハイム美術館では、鉄骨構造のために6社が入札した際、各社間で入札額の誤差が1%しかなく、しかも予定コストよりも18%も安い額が提示された。コンピュータ・モデルによって部材の情報が詳細にわたるまで共有されたことも理由だが、コスト面、建設面での効率化を図るために、鉄骨設計の最適解を求めてコンピュータ・テクノロジーが用いられた結果である。


左:ゲーリー・テクノロジーズ社「デジタル・プロジェクト」
右:エイト・スプルース・ストリート(アメリカ・ニューヨーク、2011)
Image Courtesy of Gehry Partners, LLP

また、ニューヨークのエイト・スプルース・ストリートは、高層ビルとしてまれに見る複雑な外壁を持つが、それを構成する10300枚近くの外壁パネルはたった3種類しかない。しかも、特注パネルはそのうちの20%のみ、残りは40%の規格パネル、40%の標準パネルだ。ここでも、デザインとコスト、工期などの最適解をコンピュータによってはじき出したことが背景にある。

ゲーリー建築では、「マスター・モデル」と呼ばれる建築の中央データに、デザイン、設備、建材、建設、工程などのすべての情報が統合されるようにし、コストや工期をコントロールしながらデザインを柔軟に模索できるようになっている。ゲーリーは、そのしくみづくりを行ったと言える。

現在は、建築もコンピュータ・テクノロジーによって大いにサポートされているのは周知のところだ。だが、ゲーリーの場合は、自らの手でそのテクノロジーをつくり上げていったところに、探究心とユニークさが感じられるのである。

文:瀧口範子

>>第1回「建築模型のみかた」
>>第2回「展覧会の見どころ」

企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」は、世間の常識に挑戦する作品をつくり続ける建築家 フランク・ゲーリーの「アイデア」に焦点をあて、彼の思考と創造のプロセスを、数々の模型や建築空間のプロジェクションを通して辿る展覧会です。
本連載では、ゲーリー建築をより深く理解し、その魅力を一層楽しめる展覧会の見かたを本展企画協力の瀧口範子が解説します。

本展は、建築家 フランク・ゲーリーをさまざまな観点から捉えている。完成した作品だけでなく、考える過程や利用する建材、インスピレーションの源など、幅広い側面からゲーリーその人を伝えようとしているのが特徴と言える。
したがって、展覧会会場の中にはいくつもの見どころがある。それを順を追って説明しよう。

まず、1階エントランス部分に設置されているのは、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの50分の1の模型だ。この建物は、ルイ・ヴィトンの複合文化施設として2014年秋にパリのブーローニュの森の中に完成したもの。本展では、ゲーリーのアイデアの変遷をテーマとしているために、思考段階でつくられた模型をたくさん展示しているが、同模型は本展では数少ない完成模型である。多重奏する帆がたなびくような実景が窺えるものだ。

階段を下りて地下へ行くと、そこでは壁に投影された映像によってゲーリーの建物が追体験できる。本展で技術監修を務めた遠藤 豊自身が、ロサンゼルス、パリ、ビルバオの3カ所で実際に撮影した3つの建物の様子が、臨場感豊かに味わえるという趣向を楽しんでいただきたい。

その後、ギャラリー1へ。ここは本展の序章とも呼ぶべき空間で、フランク・ゲーリーのパーソナルな側面を伝えようとしている。ロサンゼルスのゲーリー事務所内の、それも彼自身のオフィスから運んできたさまざまなオブジェが、まず目をひくだろう。ただのガラスの塊であったり、アクリル・ブロックを重ねたようなものであったりするが、そんなものが見れば見るほどにキャラクターを帯びてくる。ゲーリーがインスピレーションの源として、そうしたオブジェを身の回りに置いていることの意味が見えてくる。

ここでは、ゲーリーの自邸の映像や模型が見られるほか、本展のテーマ「アイデア」について書かれた「マニフェスト」を読み上げるゲーリー自身の姿が映像で流されている。86歳の今も、新しいアイデアや納得できるかたちを求めて奮闘し、不屈の精神でそれを実現にまで運んでいくフランク・ゲーリーという建築家の一端をかいま見ることができるはずだ。

ギャラリー2へ歩を進めよう。本展でいちばん大きな空間を占めているのは、建築模型の数々である。この展示室では、最近、そして進行中の5プロジェクトに絞って、ゲーリー事務所でつくられてきた模型を展示している。色分けされたブロックで建築のプログラムを構成する段階、それを外壁で覆う段階、外壁の形状と内部空間の関係を模索する段階、建物全体の構成や構造を固めていく段階。そうした各段階で無数のアイデアがテストされているのが、これらの模型から感じられる。ここは、本展の核とも言える部分だ。

同じくギャラリー2では、壁面にも目を向けていただきたい。「アイデアグラム」とは、建築家が発想源とするアイデアをダイヤグラム化したもの。フランク・ゲーリー、そして広く建築家がどんな要素を鑑みながら建築を考えるのかが想像できるだろう。アイデアグラムは、本展ディレクターの田根 剛が作成した。

そのほかにも、この壁面には実際にゲーリー建築で使われている発色チタンが生の素材として展示されている。見る方向によって色が変わる不思議な素材だ。また、そんな素材の表情がよく見える外壁の写真、ゲーリー建築の内部のスタディーをパネル化したコーナーも見どころのひとつである。

ギャラリー2では、ゲーリー・テクノロジーズ(以下GT)の説明も必見である。複雑な曲線からなる自身の建築を実現するため、ゲーリー事務所は三次元モデルなどのコンピュータ技術を早くから利用してきた。その機能をますます洗練させていった結果、現在では建築や設備設計の詳細データを建設業者ら関係者と共有できるようになっただけでなく、工期、コストなども管理下におけるようになった。ここでは、そのGTのなりたちと技術をわかりやすい映像で見せている。

この展示室を出る手前左手に、ゲーリーがこれまでデザインしてきた家具も展示されている。段ボール素材を重ねたチェアは、十分な強度を実現していることが驚きだが、表に現れる美しいパターンも見物である。

ここまでたっぷりとゲーリー建築を目にした後は、ギャラリーを抜けた先にある回廊でゲーリー建築を読み解くもう2つの要素を知ることができる。「魚」と「工場建築」である。「頭と尾を切り落としても、まだ動きを持つ」とゲーリーが夢中になった魚の形状、そして若い頃、自身でカメラに収めた安価な素材で成り立つ工場建築は、現在のゲーリー建築にもつながるエッセンスを含んでいる。

難しくてわかりにくいとも思われていたゲーリー建築は、フランク・ゲーリーという個人の目と手の作業からできあがっていく。それを感じていただければ、本展の見どころは十分に伝わっているだろう。

文:瀧口範子
写真:木奥恵三

>>第1回「建築模型のみかた」
>>第3回「ゲーリー建築を支える技術」