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2020年1月 (3)

2020年1月11日、企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に関連し、ギャラリートーク/原画解説「頭の中のキラキラを外に出すプロセスのマル秘」を開催しました。グラフィックデザイナーであり、日本デザインコミッティーのメンバーでもある原 研哉によるイベントです。

「人々の頭の中のイメージは大体キラキラしているものだが、それを外に出してしまうとたいていの場合、萎んでしまう。プロフェッショナルは、そのイメージが損なわれないよう外に出す技術を磨いていく必要がある」と語る原。トークでは、会場にて展示されているスケッチを中心に、自らが関わったプロジェクトのプロセスを説明しました。

雑誌『一冊の本』表紙では、スーパーリアルの画家 水谷嘉孝に仕上げてもらうための原画を、原は約25年前から描き続けており、イメージをリアルなかたちとして表出するプロセスを、具体例をあげながら解説しました。

「HOUSE VISION 2016 TOKYO EXHIBITION」では、精細なスケッチが描かれた台割に基づく書籍編集によって展覧会のディレクションを行なったことなどに触れ、原が、頭の中に描いたイメージを、どのようにスケッチに落とし込み、グラフィックや展覧会を成り立たせているかについて語りました。

台割に添った精細なスケッチは、書籍の編集デザインであると同時に、展覧会のディレクションの中核的な作業であることを説明しました。「建築としての展示ハウスの把握や、それを写真としてどう表現するかを、細部にわたって描いていくことで展覧会ディレクターとしての準備作業が完成していく」という原の解説は、自身のスケッチの意味を分かりやすく解きあかすものでした。

2018年に21_21 DESIGN SIGHTが開催し、好評を博した展覧会「AUDIO ARCHITECTURE展」の、台湾・台北への巡回が決定しました。
2020年夏、華山文化創意園區(Huashan 1914 Creative Park)で開催されます。2016年の「単位展 in 台北」に続き、INCEPTIONが主催します。
小山田圭吾(Cornelius)が書き下ろしたひとつの楽曲を軸に、9組の作家による多彩な映像作品とインテリア、グラフィック、テキストまで、あらゆる要素がそれぞれの固有性を発揮しながら連動し、調和し続ける... あの「音楽建築空間」を再び体感していただける機会となります。
展覧会ディレクターの中村勇吾は、台北展開催にあたり、「よい音楽は軽々と国境を越えていきますが、この展覧会もそのようなものであれば、と願っています。」とコメントしています。
どうぞお楽しみに!

This Summer, "AUDIO ARCHITECTURE" Exhibition, directed by Yugo Nakamura and organized by 21_21 DESIGN SIGHT in 2018, will travel to Taipei, Taiwan.
Following the success of "Measuring Exhibition in Taipei" in 2016, it will be held by INCEPTION again, but in a new venue, Huashan 1914 Creative Park.
Based on a piece of music composed by Keigo Oyamada (Cornelius) exclusively for the exhibition, 9 films created by a variety of artists, interior, graphic and even text relate each other. Each has its own identity, and all elements work in conjunction with the music, creating a continuous harmony...... You will be able to immerse yourselves into this "audio architecture" again.
Please stay tuned!

Facebook: https://www.facebook.com/inceptionltd/
Instagram: https://www.instagram.com/inception_co/
Official Website: https://www.inception-ltd.com/

Photo: Atsushi Nakamichi (Nacása & Partners Inc.)

「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」に展示されている"原画"は、つくり手の世代、作風、目的などによって豊かなバリエーションがあります。そこから各々の姿勢を読み解くのが、この展覧会の大きな楽しみです。ここでは、そんな"原画"の一部をデザインジャーナリスト 土田貴宏による解説とともに見てみましょう。

デザインも、アートも、評論も、あらゆる表現活動は完成したものが世の中に発表され、長期間にわたって多くの人の目に触れていきます。しかし今回の「㊙展」がフォーカスするのは、つくり手の発想の基点になったものや、制作の過程で生まれたものなどが伝える、クリエイションの鍵になったひらめきです。そのほとんどは世に出る機会のない、つまりはつくり手にとって「㊙」の存在。完成したものからは窺い知ることの難しい、ものづくりの圧倒的なダイナミズムが、そこに詰まっています。

たとえば1940年生まれで、1979年から日本デザインコミッティーに参加しているデザイナーの川上元美さんには、下のような椅子のスケッチがあります。

© Motomi Kawakami

このスケッチは、ドラフター(定規などの製図用具をそなえた製図台)で描いた黒の線画に、彩色を施したものです。全体のフォルムは直線を基調にしていますが、手描きならではの曲線がところどころに用いられているのがわかります。またフレームは木で、座面は布地張りでできていることが、パステルのような画材による彩色で表現されています。それぞれの微妙な色合いや雰囲気を、手描きの筆致によって伝えているのです。拡大部分の線画を添えることで、細部のイメージも明確にしてあります。

このような椅子をデザインするプロセスの中では、よりラフなスケッチやドローイングから、数値などを記した図面まで、3次元のフォルムを2次元で表現する段階がいくつもあります。上のスケッチは、その中間のものと位置づけられるでしょう。デザインのイメージを的確に伝えるとともに、ディテールなどの検証を可能にするために役立ちます。

© Motomi Kawakami

また上のスケッチは、陶磁器をデザインする過程で描かれたものです。先ほどの椅子のスケッチとは違い、すべて1本のペンでフリーハンドで描かれています。多くが円錐を基調にしているものの、さまざまな形状の器が1枚の紙に描かれていることから、デザイナー自身もまだ明確なイメージを掴めていないことが想像できます。器を真横から見た状態や、斜めから見た状態が混在し、線を重ねて描いた部分もあります。デザイナーはこうして自由に手を動かしながら、デザインのインスピレーションを確固としたものへと高めていくのでしょう。

© Motomi Kawakami

こちらもフリーハンドで描かれた、3脚のアームチェアのスケッチです。座面、背もたれ、それを支えるフレームは共通で、脚部の形状のバリエーションを考えている過程のようです。すべてフレームは鋼管を用いており、青い椅子はキャスター付き、緑の椅子はスタッキング仕様、赤い椅子は前脚のみのキャンチレバー(片持ち構造)が特徴になっています。オフィスでの使用を前提にしたものらしく、形は違っても統一感があります。あえて正面や横からではなく、斜め後ろから見た状態で形態を検証しているのも興味深いところです。

現在は、手描きのプロセスを踏むことなく、最初からコンピュータの中で3次元のデータを操ってデザインを発想するデザイナーも増えているようです。早い段階からデジタル技術を使って立体データを制作すれば、あらゆる角度からフォルムやディテールを確認でき、修正も容易で、色彩や素材感を自由に変更することが可能です。川上さんの仕事でも、コンピュータを使うことが増えてきたと言いますが、手で描いたものの人間味にも愛着があるようです。こうした感覚については、デザイナーの世代や各々の経験が反映されることでしょう。

川上さんは、橋、公共空間、インテリア、家具、日用品など幅広いものを手がけています。その課題に求められる要素を適切に満たし、高度な精度感のある、端正な印象のデザインが多いようです。それらは多くの人々が使うのにふさわしい普遍性や汎用性をそなえていますが、同時にデザイナーの個性を感じさせるのは不思議です。自身の手を使って最初に掴んだイメージが、いくつもの段階を経ても揺らぐことなく貫かれているからに違いありません。

文・土田貴宏