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2016年5月 (5)

国立新美術館で、2016年6月13日まで開催中の「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」。21_21 DESIGN SIGHTディレクターの一人でデザイナーの三宅一生が、1970年に三宅デザイン事務所を立ち上げてから現在に至るまでの仕事を紹介する展覧会です。
ここでは、21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターの川上典李子が、同展覧会にあわせて発行されたオフィシャルカタログの見どころを紹介します。

「出発にはいつも期待と不安がある。美術大学を卒業し、パリへと旅立った。オートクチュールを学び、五月革命が起こった。そのパリで、モードは継続のうちにすでに完成されていて、自分がやることはそこにはないと思った。身体、言語、国籍のハンディも感じた。けれど、デザインは発見なのだから、一般の人たちのために自分ができることを見つけていこうとものづくりと始めた。その途上で、たくさんのすばらしい人たちとの出会いがあった。......」

国立新美術館で6月13日まで開催されている「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」展。
開催にあわせて発行された公式カタログ兼書籍には、上記のように始まる三宅の文章が収められています。「服のデザインは着る人をワクワクさせるだけでなく、着る人を取り巻く社会もよくできると信じている」、「デザインは生き物であって、常に追い求め行動を起こさないと人を惹きつけることも次の時代に引き継ぐこともできない」との一文も......。

身体を解放し、心を自由にする可能性に満ちたデザインで、次の時代を開いてきたことが伝わってくる展覧会会場のセクション「A」。従来の衣服には使われることのなかった素材や手法にも果敢に挑み、工学的なアプローチをも試みていたことを知るセクション「B」、三宅一生の原動力となってきた複数のテーマを探るセクション「C」。

大きく3つの軸で紹介されている衣服は、21_21 DESIGN SIGHTで2010年に開催した企画展「REALITY LAB―再生・再創造」展の参加作家でもある岩崎 寬の撮りおろし写真で収録されています。素材の特色、細部の工夫。写真を通して見ることでの再発見も。吉岡徳仁が紙と透明樹脂で制作したボディのディテールも、岩崎の写真はしっかりととらえています。

1970年代にまで遡り進行形のプロジェクトまで、長い時間を費やして厳選された展示作品の各々について、制作年はもちろん素材に関するデータが丁寧に添えられているのも、本書の醍醐味。三宅をよく知る7名の寄稿者の原稿はもちろん、「素材」「プリーツ」「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」「A-POC」「132 5. ISSEY MIYAKE」「陰影 IN-EI ISSEY MIYAKE」に関する文章も、その創造の源流とは何か、私たちが考えを巡らせるうえで実に貴重なものです。

読み進めたり戻ったり、ページをめくるほどに活動全体を貫く視点を改めて感じ、展示作品を一点一点目にしていったときの気持ちが強く蘇ってきました。会場で感じたとてつもないエネルギーが、この誌面からも湧き出ている! ―そう感じるのは、私だけではないでしょう。

川上典李子


ISSEY MIYAKE《ハンカチーフ・ドレス Spring/Summer 1971》1970年
「グリッド・ボディ」デザイン:吉岡徳仁デザイン事務所
撮影:岩崎 寬

ISSEY MIYAKE《ウォーターフォール・ボディ Autumn/Winter 1984》 1984年
「グリッド・ボディ」デザイン:吉岡徳仁デザイン事務所
撮影:岩崎 寬

ISSEY MIYAKE《フラワー・プリーツ Spring/Summer 1990》1989年
撮影:岩崎 寬

132 5. ISSEY MIYAKE 《スクエア・ウール》 2015年
撮影:岩崎 寬

"MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事"

監修:三宅一生
青木 保(国立新美術館長)
企画:北村みどり
編集:国立新美術館
公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
株式会社求龍堂
アートディレクション:佐藤 卓
撮影:岩崎 寬
発行:株式会社求龍堂
(国立新美術館および全国の書店で販売)
発売日:2016年3月16日
定価: 2,800円(税込)
表記 : 日本語・英語
(一部中国語、フランス語)

国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」

2016年3月16日(水)- 6月13日(月)
休館日:火曜日(ただし、5月3日は開館)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
開館時間:10:00 - 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
観覧料(税込):当日 1,300円(一般)、800円(大学生)/前売・団体 1,100円(一般)、500円(大学生)

主催:国立新美術館
共催:公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団、株式会社 三宅デザイン事務所、株式会社 イッセイ ミヤケ
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

>>国立新美術館 ウェブサイト
>>展覧会ホームページ

2015年に開催し、好評を博した21_21 DESIGN SIGHT企画展「単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい?」の台北での開催が決定しました。
2016年7月1日より、松山文創園區 五號倉庫で開催されます(主催:啟藝文創 INCEPTION CULTURAL & CREATIVE Co., Ltd.)。単位というフィルターを通して、私たちが普段何気なく過ごしている日常の見方を変え、新たな気づきと創造性をもたらした「単位展」が、台湾でどのような拡がりを見せるのか。ご期待ください。


「21_21 DESIGN SIGHT企画展 in 台北 単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい? ―」メインビジュアル

21_21 DESIGN SIGHT企画展 in 台北
単位展 ― あれくらい それくらい どれくらい? ―

会期
2016年7月1日(金) - 9月16日(金) 会期中無休
開館時間
10:00〜18:00 (入場は17:30まで)
会場
松山文創園區 五號倉庫(台北市信義區光復南路133號)
Songshan Cultural and Creative Park Warehouse Five (No.133, Guangfu South Road, Xinyi District, Taipei City, Taiwan)
入館料
前売り 200NT$、一般 280NT$、学生 250NT$、65歳以上もしくは障害者手帳をお持ちの方140NT$、7歳以下 無料
主催
啟藝文創 INCEPTION CULTURAL & CREATIVE Co., Ltd.
企画
21_21 DESIGN SIGHT

2016年5月22日、展示作品「12組による雑貨」の出展者、小林和人(Roundabout, OUTBOUND)と、小林 恭・マナ(設計事務所ima)、たかはしよしこ(S/S/A/W)によるトークを開催しました。

生活日用品を扱うRoundaboutはその名の通り、様々なものが行き交う交差点のような場所になればと考えてはじめたという、小林和人。自身が運営するもう一つの店、OUTBOUNDも含め、機械生産のものから手仕事のものまでジャンルを問わず扱っていながら、そこには、「ものには、機能と作用の両方が備わっている」という考えが通じています。雑貨とは、皮をめくっていくうちに消えてしまうらっきょうのようなものではないか、と例える小林和人は、それが雑貨かどうかは、そのものの置き方によっても決まると自身の「雑貨観」を述べました。

小林 恭・マナも、普段、設計事務所imaとして「ものを、雑貨を、どのように置くか」を考える仕事をしています。そこに置かれるものを出発点とした、展示空間や店舗など国内外での事例からは、つくり手と選び手がその生活感を共有するという、雑貨の一面を見ることができました。また、本展出展作品「ケンセツザッカテン」では、二人の専門である建設の専門道具から、雑貨"とも言える"ものを集めたと語りました。

フードデザイナー たかはしよしこは、本展出展作品で、会場に自身のアトリエ「S/S/A/W」を再構築しています。料理を専門とするたかはしにとって、「S/S/A/W」の名の通り、季節は大事な要素であるといいます。本展のために会場に運び込まれた雑貨にも、共通して自然の素材を使ったものが集まりました。この、雑貨を集めてアトリエを再構築するという行為を通じて、たかはし自身、自分の好きなものを捉え直すことになったと語りました。

異なる分野で活躍する三者がそれぞれの世界観を語り、来場者と共有する、和やかなトークとなりました。

2016年5月14日、企画展「雑貨展」ショップ監修の山田 遊と、Sumallyの代表を務める山本憲資によるトーク「欲しいもの、持っているもの」を開催しました。

本展展示作品「雑貨展のWANT or HAVE」では、会場に展示された雑貨の一部をウェブサービスSumallyを通して紹介しています。このサービスでは、それぞれのユーザーが、Sumally上に紹介されているモノに対し、「want it」もしくは「have it」のいずれかを選択することで、他のユーザーとモノの情報を共有できます。雑貨展では、公式Sumallyアカウントを設け、それぞれのユーザーが展示された雑貨の情報を共有できるようになっています。

トークは雑貨展の展示内容と、雑貨展コンセプトショップ「雑貨店」の関係性に触れられつつ進行しました。現代の情報の在り様と、そこから派生するモノの選び方と買い方。時代の動きの中で、なぜウェブサービスSumallyを生み出したのか。そして今、人々はどのような手段を使って情報を得て、モノを自分の生活の中へ取り込むのか。モノを売る人、情報を扱う人、それぞれの視点で語られました。これからどのようにモノと付き合っていくのか、その未来像が浮かび上がる内容となりました。

2016年4月28日、21_21 DESIGN NIGHT 特別企画「『何に着目すべきか?』」を開催しました。雑貨展企画チームの橋詰 宗が、加藤孝司、木村稔将、古賀稔章とともに行なう不定期イベント『何に着目すべきか?』。今回は雑貨展に合わせ、本展の参加作家や出展者を交えた3部構成の特別バージョンとなりました。

本展参加作家の菅 俊一、野本哲平を迎えた[第1部]「雑貨の発見」、[第2部]「雑貨整理学」。何気なく使っている道具や日用品が、いかにして雑貨となるのか、さまざまな空間にあふれる雑貨をどのように整理整頓すればよいのか、などを議題に、菅や野本の作品に触れつつトークを行ないました。

そして、[第3部]「雑貨な音楽」では、本展出展者の小林和人(Roundabout, OUTBOUND)を迎えるとともに、彼の持参したレコードをBGMに、21_21 DESIGN SIGHTが架空のラジオスタジオに変身。ゴールデンウィークのはじまりに相応しい、賑やかな一夜となりました。