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Another Kuramata Design

展覧会ディレクター 関 康子によるウェブコラム
「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展への道 第6回

倉俣史朗さんもソットサスさんも、雑誌などで知られていない「もう一つの仕事=Another Design」があります。今回は、倉俣さんのもう一つの仕事をご紹介しましょう。

友人、知人、家族のためのデザイン

展覧会ブックの後半部分「倉俣クロニクル」の作品一覧を見ていただくと、倉俣さんがてがけたショップや家具の名前のなかに、「**邸」「**オフィス」などの仕事が記されています。これらは、倉俣さんの知人、友人などの自宅、オフィスの家具やインテリアの仕事で、友人の子どものためのチャイルドチェアであったり、知人宅のリビングや家具だったり、オフィスデザインであったりします。なかには宮脇檀さん、篠原一男さん、安藤忠雄さんといった建築家とのコラボレーションもあります。それらは、「ミス・ブランチ」や「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」、あるいは「ISSEY MIYAKE」の店舗やバー「オブローモフ」など、雑誌などで紹介されている倉俣作品とは趣がまったく異なるものばかり。使い手の生活や仕事のあり方を徹底分析し、そのスタイルや価値観にそったもので、まさにAnother Kuramata Designなのです。

たとえば、1985年に竣工した港区某所にある写真家の篠山紀信さんのオフィスは、建物の設計は磯崎新さん、オフィスのインテリアと家具は倉俣史朗さんのデザインです。コンクリート打ち放しのシンプルモダンな空間に、倉俣オリジナルのライトテーブル、篠山さんの執務デスク、スタンドライト、応接用の大テーブルなど、篠山さんのために倉俣さんがデザインした家具が今も大切に使われています。

篠山オフィスの照明器具とモティーフが似ている「パイプを割いた椅子」と「パイプを割いたテーブル」
photo: Mitsumasa Fujitsuka


4台あるライトテーブルはキャスター付きなので、簡単に移動することができます。スタンド式の照明は、天井の反射光を利用するというアイデア。間接光が室内を柔らかく照らします。デザインは1982年の「パイプを割いた椅子」や「テーブル」、「スツール」の発展系といいましょうか、パイプを割いた中に、ワイヤーで照明を宙吊りするという倉俣さんらしいデザイン。応接用のテーブルは、4畳半ほどの大きさ、四つの正方形テーブルを合わせて使っているので、用途ごとに自由に組み替えることができ、実用的です。テーブルの側面は棚になっているので書類などをしまうことも可能とのこと。

三宅一生さんと訪問した5月、篠山さんは近く開催される台湾での大個展の準備で多忙を極めておいででしたが、お二人とも倉俣さんの思い出、エピソードを熱心に語り合っていました。このブログで篠山さんのオフィスや家具をご紹介できないのは残念ですが、今回の展覧会ブック、篠山さん撮影の倉俣作品も多く掲載されています。

篠山さんが撮影した倉俣作品、展覧会ブックにも掲載
アクリル・スツール(羽毛入り)
山さんが撮影した倉俣作品、展覧会ブックにも掲載
プラセボ(サイドテーブル)


ハルちゃんのための椅子とテーブル

倉俣さんは、友人に子どものための椅子やテーブルをデザインして、プレゼントしていました。たとえば、グラフィックデザイナー黒田征太郎さんの息子さんのための椅子、そして倉俣さんの愛娘ハルちゃんのための椅子とテーブルなどです。それらは合板製で、とってもシンプル。使いやすさ、丈夫さ、安全を最優先にデザインされたもの。でもその中に、倉俣さんらしいエスプリも仕込まれています。ハルちゃんのための椅子とテーブルは、合板製のシンプルで温かいかたち。椅子の背には穴が開いていて、ハンカチやリボン、紐などを通して遊べる工夫が施されています。そう! これらの家具は遊び心に満ちていて、子どもたちのワクワクドキドキや好奇心を引っ張り出してくれるのです。私も、子ども時代をこんな家具と一緒に過ごせたら、もう少し感性豊かな人間?になっていたかも・・・。

ELLEDECOに掲載されたハルちゃんの椅子とテーブル(右)と黒田さんの息子さんのための椅子
『ELLE DECO』2009年12月号より
Photos: Masao Murabayashi


今回の展覧会では、残念ながらこうしたAnother Kuramata Designはご紹介できませんが、もう一つの倉俣デザインの存在を知ったうえで見ていただけると、新しい発見があるかもしれません。

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