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川上典李子による「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」レビュー(前編)

2016年4月 6日 15:00からだ,デザイン,三宅一生,手仕事

21_21 DESIGN SIGHTディレクターの一人でデザイナーの三宅一生の仕事を紹介する展覧会「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」が、国立新美術館にて開催されています。開幕初日の会場を訪れた同アソシエイトディレクターの川上典李子が展覧会の見どころをレポート。前編では、会場の様子をお伝えします。

国立新美術館(六本木)で「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」が開幕しました。三宅一生が活動を開始した1970年に遡り、現在進行形のプロジェクトまで、厳選された百数十点の服や本展のための映像、インスタレーションを含む構成となっています。

会場を入ってすぐ、吉岡徳仁が手がけた紙のグリッドボディで紹介されているのは1970年代の12着。服は第二の皮膚であるということを示すタトゥの柄をプリントしたボディウエアや三宅が一貫して取り組む「一枚の布」を象徴するコクーン・コート、日本に伝わる刺し子や丹前、作業着にも着目し、独自に発展させた服......。衣服を身体から探り、産地や企業との素材開発やアーティストとの恊働にも積極的な三宅の活動の始まりを一望できます。

続くセクションでは、透明樹脂のグリッドボディを用いた吉岡のインスタレーション。プラスティック・ボディやラタン・ボディ、ウォーターフォール・ボディなど、1980年代の「ボディ」シリーズから、幅広い素材や技術を試みながら身体と服との関係を問い続ける三宅の視点が伝わってきます。

その先に待つのは三宅とチームの試みを紹介する広々とした空間、佐藤 卓の構成です。製品プリーツのマシンを用いた「IKKO TANAKA ISSEY MIYAKE」の制作実演もあり、「132 5. ISSEY MIYAKE」に関しては、独自の「折り」に触れることのできる工夫も。試行錯誤のうえで創出してきた服づくりの手法やプロセスをあえて公開するということ。そのことに対する三宅の想いもまた考えずにはいられません。記者会見で三宅は語っていました。「子どもから大人まで、自分もつくりたいと創造意欲をかきたてられるような展覧会にできたと思う」。

出会いと発見の多い庭を巡るような楽しさに驚かされながらこの会場で知るのは、幅広い世界への好奇心にもとづく柔軟な発想、チームの存在、企業との恊働によって、美しく、心に響き、喜びに満ちたデザインを現実のものとしてきた仕事です。

「素材は無限」と一本の糸に遡っての素材の研究や実験を重ね、手の仕事や伝統と現代のテクノロジーを融合させ、他分野の人々も積極的に招きながら革新的でありながらも実用的な服を探る。そのすべての時間が生き生きとした力となって、現在から未来へ、さらに次なる状況を拓こうとしている様子も伝わってきます。

文:川上典李子
>>後編へつづく


国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」 展示風景(撮影:吉村昌也)

国立新美術館「MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事」

2016年3月16日(水)- 6月13日(月)
休館日:火曜日(ただし、5月3日は開館)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
開館時間:10:00 - 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
観覧料(税込):当日 1,300円(一般)、800円(大学生)/前売・団体 1,100円(一般)、500円(大学生)

主催:国立新美術館
共催:公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団、株式会社 三宅デザイン事務所、株式会社 イッセイ ミヤケ
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)

>>国立新美術館 ウェブサイト